一人目人事がつらいと感じたら|ひとりで抱えやすい7つの悩みと解決策

Staffing | 人材

一人目人事として入社したときは、「人事をゼロから立ち上げられる」「経営に近い立場で組織づくりに関われる」という期待があったかもしれません。

ところが実際に働き始めると、採用だけでなく、労務、評価制度、研修、社員面談、総務まで次々に仕事が集まってきます。

経営者からは「人事のことは任せた」と言われる一方で、重要なことを決める権限はない。社員から相談を受けても、その内容を社内の誰かに話すことはできない。自分の判断が正しいのか確認したくても、人事経験者は社内にいない。

こうした状態が続くと、「自分は人事に向いていないのではないか」「期待されて入社したのに、何も形にできていない」と感じるようになります。

しかし、一人目人事がつらくなる原因は、本人の能力不足だけではありません。人事機能が存在しなかった会社で、役割、優先順位、判断基準が決まらないまま仕事を任されていることに、構造的な難しさがあります。

この記事では、一人目人事やひとり人事が抱えやすい悩みを種類別に整理し、それぞれの原因と具体的な解決策を解説します。

  1. まず確認したい、一人目人事とひとり人事の違い
  2. 一人目人事が抱えやすい7種類の悩み
  3. 悩み1 採用も労務も制度づくりも、すべて自分に集まる
    1. なぜ仕事が増え続けるのか
    2. 解決策は、効率化より先に「やらない仕事」を決めること
  4. 悩み2 何を優先しても、別の誰かから遅いと言われる
    1. 優先順位は人事だけで決めるものではない
    2. 経営者に判断を求めるときの伝え方
  5. 悩み3 責任を任されているのに、決める権限がない
    1. 「任せる」の意味を分解する
    2. 解決策は、業務ごとの決裁者を決めること
  6. 悩み4 自分の判断が正しいのか、確認できない
    1. 判断を三種類に分ける
  7. 悩み5 経営者と社員の間で板挟みになる
    1. 人事はどちらかの代理人ではない
  8. 悩み6 成果を出しても評価されず、キャリアが見えない
    1. 成果を「作業」ではなく「変化」で記録する
  9. 悩み7 誰にも本音を話せず、孤独になる
    1. 雑談相手ではなく、専門的な相談経路を作る
  10. 一人目人事が最初の30日で行いたいこと
    1. 1週目 抱えている仕事をすべて書き出す
    2. 2週目 優先順位を経営者と合意する
    3. 3週目 判断者と相談先を決める
    4. 4週目 3か月間の目標を決める
  11. 自分の努力で改善できる問題と、会社側が変えるべき問題
  12. 一人目人事を辞めたいと思ったときの判断基準
    1. 改善の可能性がある状態
    2. 本人だけでは改善が難しい状態
  13. よくある質問
    1. Q. 人事未経験で一人目人事になりました。何から始めるべきですか?
    2. Q. 経営者がすべて「重要」と言い、優先順位を決めてくれません
    3. Q. 社労士がいれば、一人目人事の相談相手になりますか?
    4. Q. 人事の仕事が多すぎるのは、自分の能力不足でしょうか?
    5. Q. 外部の人事担当者に相談すると、何が変わりますか?
  14. まとめ 一人目人事のつらさを、個人の能力だけの問題にしない

まず確認したい、一人目人事とひとり人事の違い

一人目人事とは、その会社で初めて人事を専門に担当する人として採用または任命された人を指します。

一方、ひとり人事とは、現在一人で人事業務を担当している状態を指します。

一人目人事として入社し、そのままひとり人事を続けている人もいれば、以前は人事部門に複数名いたものの、退職や異動によってひとり人事になった人もいます。

置かれている状況は異なりますが、次のような悩みは共通しています。

一人目人事が抱えやすい7種類の悩み

悩みの種類実際に起きること問題の中心
業務量採用、労務、制度、研修を同時に求められる仕事の総量
優先順位すべてが「急ぎ」になっている経営判断の不在
役割・権限任されているが決められない責任と権限の不一致
専門判断判断が正しいか確認できない知識と相談先の不足
人間関係経営者と社員の間で板挟みになる立場の曖昧さ
評価・キャリア成果を理解してもらえない評価者の不在
孤独・心身の負担誰にも本音を話せず、休みにくい継続できない体制

ここからは、それぞれを具体的に見ていきます。

悩み1 採用も労務も制度づくりも、すべて自分に集まる

一人目人事として入社すると、「人に関する仕事」がすべて人事に集まりやすくなります。

例えば、午前中は候補者との面接を行い、昼には退職予定者と面談し、午後は勤怠の不備を確認する。その合間に、経営者から評価制度の案を求められ、現場からは研修を企画してほしいと言われる、といった状態です。

一つひとつの業務は人事の仕事に見えます。しかし、すべてを一人で同時に進められるわけではありません。

なぜ仕事が増え続けるのか

原因は、本人の処理能力よりも、人事の担当範囲が定義されていないことにあります。

経営者や現場は、人に関する問題が発生するたびに人事へ相談します。一人目人事も期待に応えようとして引き受けます。その結果、会社の中で担当が決まっていない仕事が、人事へ流れ込み続けます。

解決策は、効率化より先に「やらない仕事」を決めること

最初に行うべきなのは、仕事を次の四つに分けることです。

  1. 期限や法令上の対応が必要な業務
  2. 従業員への影響が大きい業務
  3. 採用や組織づくりなど、経営上重要な業務
  4. 改善したいが、すぐには着手しない業務

そのうえで、経営者に「今月行う仕事」だけでなく、「今月は行わない仕事」も確認します。

業務効率化ツールを導入しても、仕事の入口が開いたままでは負担は減りません。まず仕事の総量を制御する必要があります。

悩み2 何を優先しても、別の誰かから遅いと言われる

採用を優先すると、評価制度が進みません。評価制度に着手すると、研修の企画が止まります。社員面談に時間を使うと、求人媒体への対応が遅れます。

一人目人事がつらいのは、仕事が多いからだけではありません。優先順位を自分一人で決め、その結果についても自分が責任を負う状態にあるからです。

優先順位は人事だけで決めるものではない

どの業務を先に進めるかは、単なる作業管理ではなく、経営判断です。

採用を優先するのか、離職防止を優先するのか。評価制度を先に整えるのか、管理職育成から始めるのか。これは会社の事業計画や組織課題によって変わります。

人事が選択肢を整理することはできますが、最終的な優先順位まで一人で背負う必要はありません。

経営者に判断を求めるときの伝え方

「仕事が多くて大変です」と伝えるだけでは、個人の処理能力の問題と受け取られる可能性があります。

次のように、選択肢と影響を示します。

現在、採用活動、評価制度の見直し、管理職研修の三つが進行しています。今月中にすべてを完了することは難しいため、採用を優先した場合は評価制度の着手が翌月になります。どの順番で進めるか、経営判断をお願いしたいです。

人事の弱音ではなく、会社として選択が必要な問題に変換することが重要です。

悩み3 責任を任されているのに、決める権限がない

「採用は任せる」と言われたのに、求人票を出すたびに経営者の確認が必要になる。候補者を推薦しても、最後は経営者の感覚で不採用になる。評価制度を作っても、給与や昇格に関する判断基準は共有されない。

これは、責任と権限が一致していない状態です。

「任せる」の意味を分解する

人事業務には、少なくとも次の三つがあります。

  • 人事が自分で決めてよいこと
  • 人事が案を作り、経営者が決めること
  • 経営者や管理職が実行し、人事が支援すること

例えば、人事が面接日程や求人媒体の運用を決められても、採用人数、給与条件、最終的な採用可否は経営者の判断になる場合があります。

この境界が曖昧なままでは、「任されたと思って進めたら覆された」ということが繰り返されます。

解決策は、業務ごとの決裁者を決めること

最低限、次の項目について確認します。

項目案を作る人決める人実行する人
採用人数人事・部門責任者経営者人事・現場
採用要件人事・部門責任者部門責任者人事
評価制度人事経営者管理職
昇給・賞与人事・経営者経営者人事
研修人事・管理職担当役員人事・管理職

すべての権限を人事に移す必要はありません。誰が決めるのかを曖昧にしないことが重要です。

悩み4 自分の判断が正しいのか、確認できない

人事の判断には、正解が一つではないものが多くあります。

採用候補者をどう評価するか。社員からの相談にどこまで対応するか。評価制度をどの程度細かくするか。現場の要望と会社の方針が食い違ったときにどうするか。

さらに、労務や契約に関わる問題では、専門的な確認が必要になる場合もあります。

判断を三種類に分ける

判断に迷ったときは、次の三つに分けます。

  1. 法令や手続きに関する専門判断
  2. 会社として何を選ぶかという経営判断
  3. 実行方法に関する人事の実務判断

法令や手続きに関する問題は、必要に応じて社会保険労務士や弁護士などの専門家へ確認します。

人件費、採用人数、評価方針などは、経営者が決める領域です。

面接方法、情報管理、制度運用などは、人事が専門性を発揮する領域です。

これらを分けずに、すべてを一人で考えようとすると、判断の負担が過剰になります。

悩み5 経営者と社員の間で板挟みになる

社員からは「人事なら自分たちの味方になってほしい」と期待されます。一方、経営者からは「会社の方針を社員に理解させてほしい」と求められます。

双方の意見が一致しているときは問題ありません。しかし、評価、給与、異動、退職、働き方などをめぐって意見が対立すると、一人目人事がその間に立つことになります。

人事はどちらかの代理人ではない

人事の役割は、社員の要望をすべて通すことでも、経営者の決定をそのまま伝えることでもありません。

事実を整理し、組織への影響を示し、会社として判断できる状態を作ることです。

社員から要望を受けた場合は、次のように整理します。

  • 何が起きているのか
  • 個別の問題か、組織全体の問題か
  • 放置した場合、どのような影響があるか
  • 対応の選択肢は何か
  • 最終的に誰が決めるべきか

人事がすべての対立を解消する必要はありません。対立を経営課題として可視化することも、人事の役割です。

悩み6 成果を出しても評価されず、キャリアが見えない

採用人数などは数値で示しやすい一方で、労務トラブルの予防、管理職への助言、評価制度の改善などは成果が見えにくい仕事です。

問題が起きなかったこと自体が成果であっても、経営者からは「何をしていたのか分からない」と見られる場合があります。

さらに、社内に人事経験者がいないため、人事としての成長を評価してくれる人もいません。

成果を「作業」ではなく「変化」で記録する

「面接を20件行った」だけでなく、その結果として何が変わったかを記録します。

  • 求人要件を見直し、書類選考の通過率が改善した
  • 入社手続きを標準化し、確認漏れを減らした
  • 管理職面談を導入し、退職前の兆候を把握できるようになった
  • 評価会議の手順を統一し、部門間の評価差を確認できるようになった

月に一度、実施したこと、変化したこと、次に必要な判断をまとめて経営者と共有します。

これは自分を評価してもらうためだけではなく、人事機能の価値を会社に理解してもらうための記録になります。

悩み7 誰にも本音を話せず、孤独になる

社員の評価、給与、退職意向、人間関係など、人事が扱う情報にはそのまま社内で相談できないものがあります。

経営者に関する悩みを、経営者本人には話せないこともあります。社員と親しくなっても、立場上すべてを共有できるわけではありません。

周囲に人がいても、仕事について本音で相談できる相手がいない。これが、ひとり人事特有の孤独です。

雑談相手ではなく、専門的な相談経路を作る

孤独を解消するには、単に社内で話す機会を増やすだけでは不十分です。

必要なのは、守秘義務や情報管理に配慮しながら、人事の判断について相談できる相手です。

  • 顧問社労士や弁護士
  • 社外の人事経験者
  • 人事責任者向けの勉強会やコミュニティー
  • 守秘義務を定めた外部人事アドバイザー
  • 経営者との定例面談

ただし、外部へ相談するときも、個人や会社を特定できる情報の扱いには注意が必要です。

一人目人事が最初の30日で行いたいこと

すべてを一度に変える必要はありません。まずは30日間で、次の四つに取り組みます。

1週目 抱えている仕事をすべて書き出す

定常業務、突発業務、未着手の依頼、今後必要になる業務を一覧にします。

2週目 優先順位を経営者と合意する

自分だけで順位を決めず、「何を先に行い、何を後にするか」を確認します。

3週目 判断者と相談先を決める

採用、労務、評価、研修などについて、誰が案を作り、誰が決め、誰へ相談するのかを整理します。

4週目 3か月間の目標を決める

「人事制度を完成させる」といった大きな目標ではなく、3か月で実現できる状態を決めます。

例えば、「採用要件と面接基準を統一する」「評価制度の現状と課題を整理する」といった水準です。

自分の努力で改善できる問題と、会社側が変えるべき問題

一人目人事本人にも、業務を整理し、経営者へ問題を伝え、必要な知識を学ぶ責任はあります。

しかし、次の問題は本人の努力だけでは解決できません。

  • 経営者が優先順位を決めない
  • 責任だけを負わせ、必要な権限を与えない
  • 法令や専門家の助言を軽視する
  • 人事の提案を聞かず、失敗だけを人事の責任にする
  • 恒常的な長時間労働を前提にする
  • 相談経路を設けない
  • 人事に関する重要情報を共有しない

一人目人事が力を発揮できるかどうかは、本人の能力だけで決まりません。会社側の受け入れ体制については、関連記事「一人目人事を採用できない会社に共通する構造的な問題」で詳しく解説しています。

一人目人事を辞めたいと思ったときの判断基準

つらいと感じたからといって、すぐに辞める必要があるとは限りません。しかし、我慢を続けることだけが正解でもありません。

まず、業務量、優先順位、権限、相談先について経営者と話し合います。その後、会社の反応を確認します。

改善の可能性がある状態

  • 経営者が問題を理解しようとしている
  • 業務の優先順位を一緒に決められる
  • 不要な業務を止められる
  • 専門家や外部支援の利用を検討してくれる
  • 責任と権限の見直しが進んでいる

本人だけでは改善が難しい状態

  • 何を相談しても本人の能力不足として処理される
  • 権限がないまま結果責任だけを求められる
  • 法令や従業員への重大なリスクを放置している
  • 経営者自身に関する問題を人事に処理させる
  • 改善を提案すると評価を下げられる
  • 心身への影響が続いている

後者に当てはまる場合は、社外の専門家や信頼できる人へ相談し、異動や転職を含めて選択肢を整理することも必要です。

よくある質問

Q. 人事未経験で一人目人事になりました。何から始めるべきですか?

最初から評価制度や研修制度を作るのではなく、現在の人事業務、未対応のリスク、経営者が困っていることを整理してください。そのうえで、最初の3か月で取り組む課題を一つか二つに絞ります。

Q. 経営者がすべて「重要」と言い、優先順位を決めてくれません

すべてを行えない理由と、各業務を優先した場合の影響を提示します。「何を行うか」ではなく、「何を後ろにずらすか」を判断してもらう方法が有効です。

Q. 社労士がいれば、一人目人事の相談相手になりますか?

労務手続きや法令に関する相談先にはなりますが、採用、評価制度、組織設計、経営者との役割分担まで相談できるとは限りません。契約範囲と専門領域を確認する必要があります。

Q. 人事の仕事が多すぎるのは、自分の能力不足でしょうか?

業務の進め方に改善余地がある場合もあります。しかし、採用、労務、制度、研修、総務を一人で担い、優先順位も決まっていない状態なら、個人の能力だけで解決するのは困難です。まず業務量と役割を可視化してください。

Q. 外部の人事担当者に相談すると、何が変わりますか?

正解を代わりに決めてもらうのではなく、業務の優先順位、経営者が決めること、人事が担うことを整理するための第三者として活用できます。ただし、経営者が判断や役割分担に参加しなければ、外部支援だけで根本的に解決することはできません。

まとめ 一人目人事のつらさを、個人の能力だけの問題にしない

一人目人事は、人事機能がまだ存在しない会社で、人事の仕事をしながら人事の役割そのものを作るポジションです。

採用、労務、評価制度、研修をすべて一人で抱え、優先順位も判断基準も与えられていなければ、どれほど経験がある人でも疲弊します。

一方で、会社の構造だけを原因にしても状況は変わりません。まず仕事を可視化し、優先順位、権限、相談先を経営者と整理することが必要です。

それでも状況が変わらない場合は、自分の努力が足りないのではなく、現在の体制では人事機能を一人で支えられない可能性があります。

ひとりで抱え続ける前に、何が本人の課題で、何が会社として決めるべき問題なのかを切り分けてください。

相談
無料

オンライン相談のご案内

「うちの場合は、何から?」30分で一緒に整理しませんか

制度設計専門のコンサルタント(支援歴7年)が、記事の内容を貴社の状況に当てはめて、着手の順番を一緒に言葉にします。準備はいりません。

  • 売り込みはしません
  • 代表が直接対応します
  • その場で決めなくてOK
30分無料相談を申し込む

入力は2分ほど。折り返しメールで日程を調整します

支援内容と料金の目安はサービス案内をご覧ください。