中間管理職の板挟みが発生する理由と対処法|登用・権限・評価の三段構造が原因

中間管理職の板挟みが発生する理由と対処法|登用・権限・評価の三段構造が原因 Structure | 構造

中間管理職の板挟みとは何か——上司と部下の間で起きる本当の構造

「中間管理職の板挟みがつらい」という相談を、私はコンサルの現場で数えきれないほど受けてきました。上からは「もっと数字を上げろ」「もっとスピードを上げろ」と言われ、下からは「人が足りない」「やり方が変わりすぎる」と突き上げられます。板挟みになった本人は、たいてい自分の力不足だと思い込んでいます。夜遅くまで両方の言い分を聞き続け、どちらの顔も立てられないまま朝を迎えるという状態が、何か月も続いているケースも珍しくありません。

けれども、30〜100名規模の成長企業を見てきた立場から言うと、板挟みが起きている会社にはほぼ例外なく共通する構造があります。板挟みになりやすい人をそもそも管理職に選んでしまう登用基準の欠陥、現場で身動きが取れないほど狭い権限しか渡さない権限設計の欠陥、そして調整に費やした労力がまったく評価に反映されない評価制度の欠陥です。この三つは独立した問題ではなく、登用で選ばれ方を間違え、権限で身動きを封じられ、評価で報われないという一本の因果でつながっています。

この記事では、この三段構造を規模別に一気通貫で描きます。あわせて、混同されやすい二つの概念とも切り分けておきます。一つは「プレイングマネージャーの限界」です。あちらはプレイヤー業務とマネジメント業務を一人で抱え込んで自分の仕事量が破綻する話であり、当サイトのプレイングマネージャーが限界になる理由で詳しく扱っています。本記事が扱う板挟みは、上司と部下という二方向からの圧力に挟まれる話であり、軸がまったく異なります。もう一つは「社長が権限を渡さない心理」です。こちらは権限を渡す側の事情であり、本記事はその裏側、権限を渡されない側の中間管理職から見た景色を描きます。

なぜ板挟みになりやすい人が管理職に登用されるのか

板挟みの一段目の原因は、登用基準の欠陥にあります。多くの成長企業では、管理職の登用基準が「プレイヤーとして成果を出した人」という一点にほぼ集約されています。営業成績が良い人、開発スキルが高い人、現場作業が速い人が、ほぼ自動的に管理職候補になっていく会社を数多く見てきました。こうした基準で選ばれた人は、確かにプレイヤーとしての仕事はできます。しかし上司と部下の間に立って両者の言い分を受け止め、折り合いをつけるという調整の場面でどう振る舞うかは、まったく別の能力です。

私が見てきた失敗パターンの多くは、プレイヤーとして優秀だった人ほど、上司の指示を疑わずにそのまま部下へ伝える傾向があるというものでした。上司の意図を自分の言葉に翻訳し、現場の事情を上司に代弁するという双方向の通訳作業を、登用の時点で誰も評価していなかったからです。結果として、板挟みで潰れるかどうかは運の要素が大きくなり、たまたま調整力のある人が管理職になれば板挟みは軽く、そうでなければ深刻化するという状態が続きます。

この登用基準そのものをどう設計し直すかについては、当サイトの管理職登用基準の作り方で5ステップに分けて解説しています。板挟みという症状の川上には、たいてい登用の入り口の設計不足があります。

なぜ現場で身動きが取れないのか——権限設計の欠陥

二段目の原因は、権限設計の欠陥です。管理職という肩書は与えられても、実際に自分の判断で決められる範囲が驚くほど狭い会社を数多く見てきました。人員配置を変えたくても社長の承認が必要、業務の優先順位を変えたくても上の判断待ち、部下の評価を上げたくても最終決裁は社長という状態では、管理職は上司と部下の要求をただ右から左へ受け渡す伝言係にしかなれません。

権限がなければ、板挟みは解消しようがありません。部下から突き上げられた要求を、自分の判断で受け入れるか調整するかを決められる立場であれば、板挟みは「自分が決める仕事」として引き受けられます。ところが決裁権がない状態でその要求だけを受け止めさせられると、板挟みは「誰にも解決できない苦痛」として本人の中に溜まっていきます。

では、なぜ社長は権限を渡さないままにしてしまうのか、その背景には社長側の心理的な事情があります。当サイトの権限委譲できない社長の心理では、決めることが自分の存在意義になっている、過去に任せて痛い目に遭った、といった5つの心理類型を扱っています。本記事が中間管理職という「権限を渡されない側」から見た構造だとすれば、あちらは社長という「権限を渡さない側」から見た構造であり、二つは表裏の関係にあります。板挟みに苦しむ本人が読むだけでなく、社長にもあわせて読んでもらう価値がある組み合わせです。

なぜ調整役の仕事が報われないのか——評価制度の欠陥

三段目、そして私が最も見過ごされていると感じるのが評価制度の欠陥です。板挟みの渦中にいる管理職は、日々かなりの時間を調整に使っています。部下同士の対立を収めること、上司の無理な要求を現実的な線まで下げること、他部署との摩擦を未然に防ぐことといった仕事です。こうした仕事は、うまくいけば何も問題が起きなかったという状態を生みます。しかし評価制度の多くは、売上や納期といった目に見える成果しか数字にしません。何も起きなかったことは、成果としてカウントされないのです。これは私がこれまで関わった複数のクライアント企業の状況を合成した例ですが、部門間の対立を早期に収めていた課長が、数字の上では「何もしていない人」と見なされ、評価面談で自分の働きをうまく説明できずに悔しい思いをしていた、という場面を何度も目にしてきました。

これは調整という仕事の性質上、避けがたい面があります。ですが、避けがたいからといって放置してよい話ではありません。実務レベルでの改善策として、私がクライアント企業に提案してきたのは次の三つです。

一つ目は、成果だけでなくプロセスを評価項目に組み込むことです。「対立をどう収めたか」「トラブルをどの段階で察知して手を打ったか」を、上司との1on1で言語化させ、半期の評価シートに残す欄を作ります。数値化はできなくても、記録として残すだけで評価者の目に入るようになります。

二つ目は、360度評価的な要素を部分的に導入することです。上司からの評価だけでなく、部下からのフィードバックを匿名で集め、参考情報として評価者に渡します。部下が「あの調整のおかげで助かった」と一言でも書けば、それは調整役の仕事が可視化された証拠になります。全社導入までいかなくても、管理職層だけに限定して試験的に始めることは十分可能です。

三つ目は、評価者自身が「何も起きなかった」状態を意図的に確認することです。四半期に一度、上司が「この部署で今期、表面化しなかったトラブルは何か」を管理職本人にヒアリングする場を設けます。表に出なかった調整の量を上司が把握するだけで、評価の解像度は大きく変わります。

なお、人事評価制度の設計は労働契約や就業規則との整合性が絡む領域でもあります。等級や賃金に踏み込んだ制度変更を行う場合は、社会保険労務士など専門家への確認をあわせて推奨します。

30人・50人・100人規模でみる板挟みの現れ方

板挟みの深刻さは、会社の規模によって現れ方が変わります。同じ「板挟みがつらい」という相談でも、30人規模の会社と100人規模の会社では、実際に効く処方がまったく違うというのが、規模の異なる複数社を見てきた実感です。

30人前後の会社では、管理職はまだ社長との距離が近く、権限の欠如は「聞けばすぐ答えが返ってくる」ことである程度カバーされています。ここでの板挟みは、登用基準の甘さが主因になりやすい段階です。誰を管理職にするかという判断がまだ社長の勘に頼っており、調整力を見ずに登用してしまうケースが目立ちます。

50人前後になると、社長がすべての決裁に目を通せなくなり、権限設計の欠陥が一気に表面化します。管理職という肩書は増えているのに、決裁権限は依然として社長に集中したままという状態です。この規模の板挟みは、権限が追いついていないことによる摩擦として現れます。

100人前後まで来ると、評価制度の欠陥が主因として際立ってきます。組織が階層化し、管理職の人数自体が増えるため、誰かを昇格させ誰かを据え置くという評価の判断が頻発します。このとき調整業務が評価に反映されない仕組みのままだと、板挟みに耐えてきた管理職ほど報われず、離職や意欲低下につながっていきます。管理職層の離職は、次に登用する人材の候補層まで細らせてしまうため、放置すればするほど一段目の登用基準の問題に跳ね返るという悪循環になりやすい段階でもあります。

つまり、30人では登用、50人では権限、100人では評価というように、板挟みを生む主因の重心が規模とともに移っていきます。自社がどの重心にいるかを見極めることが、対策の優先順位を決める第一歩になります。

板挟みから抜け出すために、今日から何をすべきか

板挟みは、本人の我慢強さや対人スキルで乗り越えるべき課題ではありません。登用基準・権限設計・評価制度という三つの制度設計が噛み合っていないという、会社側の設計課題です。

もし今、御社の中間管理職が板挟みで疲弊しているなら、まず確認していただきたいのは、その人がどの段階で詰まっているかです。登用の時点で調整力を見ずに選んでしまったのか、権限が渡っていないのか、それとも評価が調整の労力を拾っていないのかを、順番に切り分けて確認してみてください。原因の段階によって、打ち手はまったく変わります。

私はこれまで、この三段構造を一緒に整理しながら、御社の規模に合わせた登用基準・権限マトリクス・評価項目の見直しを支援してきました。どこから手をつければよいか判断がつかない場合は、無料相談のお申し込みフォームから状況をお聞かせください。三段構造のどこに欠陥があるかを一緒に洗い出すところから始めましょう。

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