この記事の目次

営業や開発などで高い成果を出してきた社員を、管理職候補として考える会社は少なくありません。ただし、本人が仕事を通じて高い成果を出す力と、チームの成果に責任を持つ力は別の役割です。実績だけで任命を決めると、本人が得意としてきた仕事から離れ、部下も上司も期待の変化に戸惑うことがあります。

厚生労働省の職業能力評価基準は、採用や人事評価に活用できる職務別の基準を示し、各企業でのカスタマイズを前提としています。候補者を比べるときは、その枠組みを自社の管理職の役割に合わせ、専門職としての成果と、人を通じて成果を出す行動を分けて確認してください。(厚生労働省・職業能力評価基準)

登用前に分けて確認する3つのこと

1. 役割が変わることを本人が理解しているか

管理職の仕事には、仕事の配分、優先順位の判断、進捗確認、育成、他部署との調整などが含まれる場合があります。実務の延長で昇格するのか、チーム運営が主になるのかを具体的に説明します。

2. 他者を通じた成果の経験があるか

後輩支援、プロジェクトの段取り、意見の違う相手との調整、問題の早期報告など、他者が力を発揮できるよう支援した事例を聞きます。完璧な管理経験がなくても、学びや相談の仕方を確認できます。

3. 本人の意思と負担を話せているか

昇進を望んでいるか、何に不安を感じるか、現在の専門業務をどの程度続けたいかを確認します。昇進しないと報酬や成長が止まる設計なら、本人にとって実質的な選択肢がありません。専門職としての成長機会も検討します。

任命前にできる小さな試行

  • 一つのプロジェクトで、仕事の割り振りや進捗確認を任せる。
  • メンバーとの振り返り面談を実施し、上司が準備と振り返りを支援する。
  • 決められる範囲、必ず相談する条件、上司へ報告する頻度を共有する。
  • 試行の後で、本人・上司・関係者から具体的なフィードバックを集める。

この試行は昇格候補を無償で管理職のように働かせるためではありません。期間、責任、支援、評価、処遇を明らかにし、役割の現実を互いに確認するために行います。

登用後に「本人の問題」にしない

任命後に部下の相談がすべて社長へ戻るなら、候補者の能力だけでなく、決裁範囲や上位者の支援を点検します。管理職の役割・基準の作り方は管理職登用基準の作り方、仕事の抱え込みはプレイングマネージャーの役割整理を参照してください。

登用候補を比較する手順

  1. 管理職の仕事を、判断・人材育成・業務計画・部門連携に分ける。
  2. それぞれについて過去の具体的な行動例を確認する。
  3. 複数の評価者から、同じ質問で事実を集める。
  4. 不足している経験と、任命後に会社が提供する支援を整理する。
  5. 本人と役割・処遇・評価方法・試行期間を話し合う。

「今の仕事で一番成果を上げている人」を自動的に管理職へ移すのではなく、必要な能力と仕事の違いを比較します。経験が不足している場合は、育成や小さなプロジェクト責任を先に経験してもらう選択肢があります。

専門職としてのキャリアも設計する

管理職に昇進しない場合に、給与・裁量・成長機会が止まる制度だと、本人の意思を尊重した選択が難しくなります。専門性で貢献する社員にも、期待する成果と処遇を示せるルートを検討します。役割・昇格条件は等級制度の作り方で扱っています。

まとめ

成果を出した人を管理職にすることが常に誤りなのではありません。個人の成果、管理職の役割を担う行動、本人の意思、会社が渡す権限と支援を分けて確認してください。任命の前後に対話と試行を設けることで、会社と本人の期待を合わせやすくなります。

この記事を読み終えたら

自社の現在地を45の質問で振り返れます。領域別の結果はその場で表示され、PDFにも保存できます。

所要 約10分・登録不要。回答内容がサーバーに送信されることはありません。