採用代行を使う中小企業のデメリットと丸投げを防ぐ発注前チェック

採用代行を使う中小企業のデメリットと丸投げを防ぐ発注前チェック Staffing | 人材

採用代行のデメリットは「丸投げ」で増幅する——中立の立場からの結論

採用代行(RPO)の利用を検討していて、デメリットを調べている経営者・人事責任者の方は多いと思います。検索すると採用代行会社自身のコラムや、比較サイトの記事がたくさん出てきますが、私はどちらの立場でもありません。組織人事コンサルタントとして7年ほど、30〜100名規模の成長企業の組織設計・制度設計に関わってきましたが、採用代行そのものを販売する仕事はしていません。利害関係のない立場だからこそ言えることとして、先に結論をお伝えします。採用代行のデメリットの多くは、代行そのものの構造的な欠陥というより、発注側が「丸投げ」してしまうことで増幅している部分が大きいというのが私の実感です。

この記事では、採用代行の一般的なデメリットを整理したうえで、なぜ30〜100名規模の会社ほどそのデメリットが表面化しやすいのかという構造的な背景、そして「丸投げにしない」を心構えではなく具体的な成果物・プロセスとして実行する方法をお伝えします。最後まで読んでいただくと、採用代行を発注する前に自社で何を準備しておくべきかが明確になるはずです。

なぜ30〜100名規模の企業ほど採用代行のデメリットが顕在化しやすいのか

採用代行のデメリットは、どの企業にも一律に同じ大きさで発生するわけではありません。専任の人事担当者を置けている企業と、総務や経営企画が採用業務を兼務している企業とでは、代行に出した後の結果が大きく変わってきます。

私が現場でよく見てきたのは、次のような構造です。専任人事がいない会社では、採用要件が「経験者・即戦力・できれば若手」といった曖昧な言葉のまま止まっていて、誰がどの基準で合否を判断するのかが文書化されていません。この状態のまま採用代行に業務を渡すと、代行会社は依頼主から渡された曖昧な要件をもとにスカウトや書類選考を進めるしかなくなります。結果として、候補者は集まっても現場が求める人材とずれてしまい、依頼主側は「代行会社の質が低い」と感じ、代行会社側は「要件がそもそも曖昧だった」と感じるという、双方にとって不幸なすれ違いが起きます。

複数のクライアント企業で見てきた状況を合成した例で説明します。社員60名ほどのIT企業で、総務担当者が採用業務を兼務しながら採用代行に一部業務を依頼していたケースがありました。求人票の文言や一次面接の質問項目までは代行会社に任せていたものの、「どの経験・スキルがあれば合格とするか」という選考基準そのものは社内で言語化されておらず、面接官によって評価がばらつくという状態が続いていました。これは代行会社の努力不足ではなく、そもそも渡すべき基準が存在していなかったことが根本原因です。

つまり、採用代行を検討する前段階として、そもそも自社がなぜ採用できていないのかという構造的な原因を一度整理しておく必要があります。専任の人事担当者そのものを採用しようとして苦戦している会社も多く、その悩みについては一人目人事が採用できない理由と、採用できても続かない理由で詳しく書いていますので、あわせて参考にしてください。

採用代行(RPO)の主なデメリット5つ

ここからは、採用代行を検討する際に押さえておきたい代表的なデメリットを整理します。

  • 費用がかかること。月額固定型のプランは、部分委託なら月10万円台から、母集団形成から面接調整までまとめて任せるフル委託だと月40万〜80万円前後まで幅があります(three-countの相場記事)。料金を公開している主要サービスの実績では、月10万〜20万円台に依頼が集中しているという調査もあります(BOXIL Magazineの調査)。専任人事1名分の人件費と比べると割安に見える場合もありますが、成果が出るまで継続する前提の費用として見ておく必要があります。
  • 社内にノウハウが残りにくいこと。スカウト文面の書き方や候補者への口説き方といった実務知見が代行会社側に蓄積され、契約を終えると自社には何も残らないという状態になりがちです。
  • 現場と代行会社との間で認識のズレが起きやすいこと。自社の文化や仕事の進め方まで正確に伝えるのは簡単ではなく、代行会社が良かれと思って進めた選考が現場の期待とずれてしまう場面が出てきます。
  • 候補者体験が損なわれるリスクがあること。応募者からすると、面接の前段階でやり取りする相手が実際に働く会社の人間ではないことに気づき、志望度が下がってしまうケースがあります。
  • 依存が生まれやすいこと。一度任せてしまうと、自社で採用を回せる状態に戻すハードルが上がり、契約を終えられないまま費用だけがかさんでいく状態に陥りやすくなります。

これらのデメリット自体は、採用代行を扱う多くの記事でも指摘されている内容です。ただ、私が現場で見てきた限り、対策として語られているのは「業務を絞って依頼する」「伴走型のサービスを選ぶ」といった心構えレベルの話に留まっていることがほとんどで、実際に何を自社の手元に残せばよいのかという具体的な方法まで書かれている記事は多くありません。

5つのデメリットのうち、費用については契約前に見積もりを比較すれば把握できますが、残りの4つ(ノウハウ非蓄積・認識のズレ・候補者体験・依存)は、契約後しばらく経ってから「思っていたのと違う」という形で表面化することが多いという特徴があります。契約前の説明資料や商談の場では見えにくく、実際に業務を任せてみて初めて気づくという性質のデメリットだからこそ、事前の備えが効果を持ちます。

「丸投げにしない」を心構えではなく成果物で決める

先ほど挙げたデメリットの多くは、発注時に自社が何を持っておくかによって影響の大きさが変わります。私が制度設計・組織設計の現場でクライアントに提示しているのは、「伴走型を選びましょう」という抽象的な助言ではなく、次の4つの成果物を自社側の手元に残しておくという具体的な考え方です。

  • 採用要件定義書。どのポジションに、どの経験・スキル・行動特性を求めるのかを言語化した文書です。
  • 選考基準シート。面接官が変わっても評価がぶれないよう、合否判断の軸を明文化したものです。
  • 求人票のリライト。曖昧な表現を、実際の業務内容と求める人物像がわかる言葉に書き直したものです。
  • 選考プロセス設計書。どの段階で誰が何を確認するのかという選考の流れを整理したものです。

この4点さえ自社側で持っていれば、採用代行に業務の一部を渡しても、渡した先で判断がずれたときにすぐ気づいて軌道修正できます。逆にこの4点がないまま代行会社に丸ごと渡してしまうと、先ほど挙げたデメリットのほとんどが顕在化しやすくなるというのが私の見立てです。

私たちが運営する「ほねぐみ。」では、この4つの成果物をキックオフヒアリングから2週間で一気に整える伴走支援を「採用スプリント」という形で提供しています。実働のスカウト送信や日程調整までは請け負わず、あくまで自社が採用を回せる状態に整えることに絞った内容で、料金は9.8万円(税別)からです。採用代行に外注する前提そのものを見直したい方にも、逆に採用代行と併用しながら自社側の土台だけ先に整えたい方にも使える内容だと考えています。

採用代行を頼むかどうかを決める前に、まず自社側の土台をこの4点で整えておきたいという方には、こちらの選択肢も検討していただく価値があると思います。2週間という短い期間に絞っているのは、専任人事がいない会社ほど「いつか整えよう」と先延ばしにしてしまいがちだからで、期限を区切ることで実際に手が動く形にしています。詳しい内容はお問い合わせいただいた際にご案内していますので、気になる方は下記のフォームからご連絡ください。

採用代行を発注する前に確認しておきたいチェックリスト

採用代行の利用そのものを否定するつもりはありません。専任人事を採用する余力がない会社にとって、代行という選択肢自体は理にかなっています。問題は、準備がないまま発注してしまうことです。発注前に、次の項目を自社内で確認しておくことをおすすめします。

  • 採用要件定義書に相当する文書が、口頭ではなく形として存在するか。
  • 選考基準を複数の面接官で共有し、評価がぶれないようにする仕組みがあるか。
  • 求人票の文言が、実際の業務内容・求める人物像と一致しているか。
  • 選考の各段階で誰が何を確認するのか、プロセスとして整理されているか。
  • 代行会社に何を渡し、何を自社側に残すのかを契約前に線引きできているか。

この5項目のうち3つ以上が曖昧なまま「はい」と即答できない場合は、代行会社を探す前に、まず自社側の土台を整えるほうが結果的に近道になることが多いというのが私の経験則です。誰にこの整理を発注するかで迷ったときは、社労士と人事コンサルの違いも判断材料として参考にしてください。

逆に、この5項目にすべて自信を持って「はい」と答えられる会社であれば、採用代行は費用対効果の高い選択肢になりやすいとも感じています。土台が整っている状態で業務の一部だけを渡すのであれば、代行会社側も迷わず動けますし、認識のズレが起きたときの修正も早くなります。デメリットの大きさは、代行会社の良し悪し以上に、発注する側の準備段階でかなりの部分が決まるというのが、複数の案件を見てきたうえでの率直な感覚です。

まとめ——採用代行のデメリットは、発注前の準備でかなりの部分を防げる

採用代行には費用・ノウハウ非蓄積・認識のズレ・候補者体験・依存という5つの代表的なデメリットがありますが、その多くは代行という仕組みそのものの欠陥ではなく、発注側の準備不足によって増幅されています。採用要件定義書・選考基準シート・求人票のリライト・選考プロセス設計書という4つの成果物を自社の手元に残しておくことが、丸投げを防ぐ最も具体的な方法です。

制度・組織まわりの外注をどう考えるかという判断軸そのものに迷っている場合は、人事制度設計は外注すべきかもあわせて読んでいただくと、外注・内製の切り分け方について理解が深まると思います。自社の状況を一度整理してみたい方は、お問い合わせフォームからご連絡ください。

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