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社員が退職を申し出てから、二つの部署の指示に挟まれていたと知る。面談では「特に問題ありません」と答えていたのに、仕事の困りごとは残っていた。30〜100人の会社で在職社員の声を聞くなら、質問を増やすだけでなく、聞いた課題を誰の判断へ返すかまで決めます。

ステイインタビューは、在職社員が働き続けるうえで大切にしていることと、仕事上の障害を聞き、会社が取り組める行動を整理する面談です。 退職意思を見抜く手段とせず、面談の目的、記録と共有の範囲、対応する担当、本人への返答を一緒に設計します。

この記事では、一件の面談を改善の判断へつなぐ手順を扱います。面談したことだけで離職を防げるとは考えず、働く条件や役割、日々の支援に会社がどう向き合うかを整理します。

ステイインタビューは、在職社員の仕事と支援を聞く

米国の人事専門団体SHRMが掲載したステイインタビューの解説は、上司と社員の個別の対話を通じ、上司が取れる具体的な行動を探る面談として説明しています。また、社員の業績を評価する面談とは分ける考え方を示しています。米国の実務書からの解説であり、日本の会社の法定手順や、定着改善の実測値としては扱いません。

本記事では、本人が続けたい仕事と、仕事を続けにくくする障害を聞くことに焦点を置きます。社員に不満を言わせることや、会社に残ると約束してもらうことを目的にしません。本人の意向を聞くことと、会社が変えられる条件を判断することは別です。

面談の種類 主に扱う問い この面談との違い
評価面談 評価期間の成果・行動をどう確認するか 評価結果の説明や判定が主題
日常の1on1 現在の仕事や成長をどう支援するか 継続的な対話の運用が主題
入社後の面談 新しい役割や相談先を理解できたか 受け入れ計画の確認が主題
ステイインタビュー 働き続けるうえで何が大切で何が障害か 聞いた課題を対応と返答へつなぐ

同じ話題が出ても、記録の使い方まで同じにする必要はありません。評価の説明をする場で、定着の話を聞く時間も追加すると、社員が何を評価に使われるか判断しにくくなる場合があります。別の目的で実施するなら、その違いを案内します。

新しい社員の役割理解や入社準備の不足が中心なら、中途採用のオンボーディング計画へ戻ります。在職者に聞く面談を増やす前に、どの運用で確認すべき課題かを分けてください。

目的・面談担当・共有の範囲を先に説明する

面談の案内には、何を知りたいか、何を記録するか、誰が見るか、会社が確認した後にどう返答するかを載せます。「本音を聞きたい」だけでは、回答がどこに届き、何に使われるかが分かりません。社員が答えるか選べることも説明します。

個人情報保護委員会の個人情報保護法ガイドライン(通則編)は、個人情報の利用目的の特定と、個人データに対する安全管理措置を説明しています。面談記録についても、使う目的と管理する範囲を確認する背景として参照します。以下の表は本記事の運用案であり、法的要件を網羅するチェックリストではありません。

案内に置く項目 自社で決める内容
目的 働き続けるうえでの仕事・支援の課題を聞く
面談担当 直接の上司、または相談できる別の担当
回答の扱い 答えたくない質問は答えなくてよい
記録 対応を考えるために残す項目と保管先
共有の範囲 本人の話、組織へ返す課題、確認する相手
対応と返答 誰が確認し、いつ状況を伝えるか

直接の上司との関係が困りごとの対象になる場合は、別の相談先を案内する方法があります。上司に言いたくない理由までその上司が追及せず、本人が話せる経路を確認します。面談担当を変える場合も、記録の目的と共有先を説明し直します。

「話したことは誰にも伝えない」と一律に約束するのは避けます。会社として対応が必要な申告には、適切な社内窓口へつなぐ場合があります。共有が必要になる場合の扱いを事前に整理し、担当者だけで判断できない内容は定めた相談経路へ戻します。

資料は、面談する担当が必要な範囲で閲覧できるようにします。全社員が見られる一覧へ個別の面談メモを置かず、本人への返答用の記録と、組織で検討する課題の記録を分ける方法を考えます。担当交代時の記録管理は、人事業務の引き継ぎ手順も参考になります。

続けたい仕事と障害を、具体的な場面から聞く

質問は、働き続けるうえで大切なことと、日々の仕事で困る場面から始めます。「辞めるつもりですか」という問いだけでは、本人が何に困り、会社が何を確認できるかが分かりません。答えを評価せず、最近の具体的な仕事へ話を戻します。

質問の例 続けて確認すること
今の仕事で続けたいことは何ですか どんな仕事・関わりに価値を感じるか
働き続けるうえで困っていることはありますか どの場面で、何が仕事を難しくするか
仕事を進めるために必要な支援はありますか 情報、判断、時間、相談先のどこが不足するか
今の役割で分かりにくいことはありますか 指示や優先順位が食い違う場面はあるか
この話を、誰にどの範囲で伝えてよいですか 対応を進めるための共有内容を確認する

表の質問を全て聞くことより、本人が選んだ一つの場面を理解することを優先します。困りごとがないと答えた社員に、必ず何か挙げるよう求める必要はありません。話を続けたい場合にどこへ相談できるかを案内して終えられます。

困る場面が出たら、起きた仕事、本人の認識、確認できた記録を分けます。「いつも指示が変わる」という話なら、どの依頼で何が変わったかを聞きます。本人が感じた負担を否定せず、他の担当へ確認すべき事実を整理します。

必要な支援を聞いても、その場で異動、昇給、業務量の変更を約束しません。面談担当が選べる範囲と、別の判断者へ戻す範囲を説明します。「確認して返答する」と伝えるなら、確認する担当と返答の時点も記録してください。

本人の生活事情を詳しく集めることを、標準の質問にしないようにします。働く条件の相談が出た場合は、仕事への影響と必要な対応の確認から始めます。面談の目的に必要のない私生活の情報まで、興味や推測で書き足さないことが大切です。

個別の面談記録と、組織で扱う課題を分ける

面談の直後は、本人の話を、仕事上の障害、本人が望むこと、会社が確認することに分けます。本人の希望と会社の決定が同じ欄にあると、まだ決まっていない変更が約束に見える場合があります。記録を本人と読み合わせ、認識が違う箇所を直します。

記録する列 書き方の例
仕事上の障害 二つの部署から同じ期限の指示を受ける
本人の希望 優先順位を判断する人を決めてほしい
共有してよい内容 依頼の重複と判断経路の課題
確認する事項 依頼の経路と実際の担当範囲
対応担当 役割を確認する責任者
状態 確認中、対応案検討、決定、保留など
本人への返答 次に伝える内容と担当・時点

組織の課題として返す資料は、個人の発言をそのまま並べるより、仕事の構造と確認する問いを示します。氏名を消しても、人数の少ない部署や特定の担当業務から本人が分かる場合があります。名前を外したことだけで匿名性が確保されたとは考えず、共有先と情報量を確認します。

同じ困りごとが複数回出ても、その件数だけで全社の傾向と断定しません。誰にどの目的で聞いたか、回答した人の範囲、確認できた仕事を残します。面談に出なかった社員も含め、全員が同じ状態だと推測して施策を決めないようにします。

管理職の判断範囲が不足している話なら、中間管理職の板挟みと権限・資源の点検へつなげられます。社員の気持ちだけの問題として扱わず、誰が何を決められるかという組織の課題も確認してください。

二つの部署から指示を受ける社員の架空例

社員65人の会社で、営業支援と運用部門を兼務する社員が、重なる依頼に困っている架空例です。ほねぐみ。の支援実績や離職防止の効果を示すものではありません。面談では「仕事は続けたいが、どちらを先にするか自分だけでは決められない」と話しました。

失敗例は、本人が優先順位を工夫すると約束して面談を終えることです。二部署がそれぞれ重要だと考えて指示しているなら、本人の努力だけで判断の衝突が解けるとは限りません。この会社では、依頼の重複と、優先順位を決める担当の不在を確認する課題へ変えます。

架空の面談メモ 対応へ返す内容
続けたいこと 営業支援と運用の経験を生かす仕事
障害 二部署から同時に期限を指定される
共有内容 依頼の経路と優先順位の判断先
確認担当 両部門の責任者と人事担当
当面の案 競合する依頼を責任者へ戻す経路を置く
返答 経路の試案と、まだ決まっていない範囲を伝える

本人の私生活や、面談で話した全てを部門責任者へ渡す必要があるかは別に確認します。この例では、本人と共有内容を読み合わせたうえで、競合した仕事と判断先の論点を渡します。役割の変更が必要なら、通常の社内判断へ進めます。

試案を伝えた後は、実際に指示が競合した一件で、相談先へ戻せたかを確認します。経路の案内だけでは進まないなら、責任者に判断する情報が届いたかも見ます。面談の満足度を聞くことと、仕事の障害がどう扱われたかの確認は分けます。

この会社の案を、全社共通の正解として使うものではありません。兼務の理由や判断権限が違う会社では、役割そのものを変える案もあります。本人の話、確認した仕事、会社が選んだ案の関係を残して、自社の条件で検討します。

対応するかと返答の時点を残す

面談を終えたら、確認する担当が課題を引き受けたかを確かめます。「人事へ伝えた」で終えると、人事が何を判断できるか分からないまま、本人への返答が止まる場合があります。確認と決定と連絡の担当をそれぞれ置きます。

返答は、対応できること、確認中のこと、現時点では対応しないことを分けます。できない場合も、会社が確認した内容と理由を伝えます。全ての希望をかなえる約束はせず、どの条件が変われば再び確認するかを説明できる範囲で残してください。

対応案に期限を置く場合は、担当者が実際に確認できる時点を決めます。答えがまだ出ていなくても、確認の状況を伝えることはできます。本人から補足があった場合は、以前の記録へ書き足すだけでなく、何が変わったかを区別して管理します。

運用を振り返る際は、実施件数に加え、課題の引受先と返答があるかを確認します。面談しない選択や回答しなかった状態も、そのまま残します。面談の数や少数の感想から、離職率が改善したと結論づけないようにします。

最初の行動は、一件分の面談について、目的・質問・共有範囲・対応担当・本人への返答を表に書くことです。 誰が課題を引き受けるかまで説明できたら、担当者と案内内容を読み合わせて実施へ進みます。

社員から聞いた困りごとを改善へ返す方法に迷う場合は、定着と人事運用の課題について無料相談するから、最初に整理するテーマをご相談ください。個人を特定しない困りごとの概要、現在の面談の目的と記録項目、対応と返答の流れがあると説明できます。「兼務による指示の重複を聞いたが、誰の判断へ戻すか決まらない」という相談例です。