等級制度の作り方を調べると、「等級は3〜6段階にする」「役割や能力を基準にする」といった説明は見つかります。
しかし、実際に自社で作ろうとすると、次のようなところで手が止まります。
等級制度は、等級数と定義文を決めただけでは完成しません。隣り合う等級の違いを説明でき、その違いを育成、配置、昇格、処遇の判断に使える状態になって、初めて制度として機能します。
この記事では、専任の人事担当者がいない30〜100名規模の企業を想定し、等級制度の作り方を7つのステップで解説します。
職能・職務・役割等級の違い、ジョブ型人事との関係、5段階の等級定義例、等級基準書、社員の当てはめ、昇格・降格、評価・給与との接続まで、実際に制度を作る順番に沿って整理します。
- 等級制度とは、社員に期待する仕事の水準を示す仕組み
- 等級・役職・評価・給与の違い
- 等級制度の代表的な3類型
- 3種類だけでは説明できないハイブリッド型
- ジョブ型人事には職務等級制度が必要か
- 30〜100名企業は職務等級を導入すべきか
- 等級制度の作り方を7ステップで解説
- 5段階の等級定義サンプル
- 専門職コースの等級定義例
- 等級基準書に入れる4つの項目
- 等級定義で避けたい3つの書き方
- 30・50・100名規模別の合意形成
- 等級制度の導入後によくある失敗
- 等級制度が必要になるタイミング
- 等級制度を変更するときの注意点
- 等級制度の作り方に関するよくある質問
- まとめ
- 規模別・仕事のタイプ別に見る等級制度設計の具体例
- まず確認したい、仕事のタイプと等級制度の相性
- 事例1 30名のサービス企業|全社共通の4段階役割等級
- 事例2 50名のIT・SaaS企業|共通等級+職種別基準+複線型キャリア
- 事例3 100名の製造業|6段階等級+職群別基準+管理職の職務等級
- 仕事のタイプ別・等級基準の作り方
- 職能・職務・役割等級では昇格の考え方も異なる
- 自社の設計を決めるための判断表
等級制度とは、社員に期待する仕事の水準を示す仕組み
等級制度とは、社員の能力、担当する職務、期待される役割などを基準に、社内で求める仕事の水準を段階に分ける仕組みです。
等級を設ける目的は、単に社員を序列化することではありません。
- 会社が社員に期待する役割を示す
- 社員が次に目指す成長段階を示す
- 評価、配置、育成、昇格の判断基準をそろえる
- 等級に応じた給与や処遇を設計する
- 管理職と専門職のキャリアパスを示す
等級制度は、評価制度や報酬制度の土台になります。
等級制度が「各段階で何を期待するか」を定め、評価制度が「一定期間にどれだけ発揮できたか」を確認し、報酬制度が「その等級と評価に対して、どのような処遇を行うか」を決めます。
これから人事制度全体を整える場合は、先に等級制度の骨格を決め、その後に評価制度の作り方を検討する方が、制度間の矛盾を減らしやすくなります。
等級・役職・評価・給与の違い
等級制度を作る前に、等級、役職、評価、給与の違いを整理しておきます。
| 仕組み | 決めるもの | 例 |
|---|---|---|
| 等級 | 期待する能力・職務・役割の水準 | G1、G2、G3 |
| 役職 | 組織運営上のポジション | 主任、課長、部長 |
| 評価 | 一定期間の成果や行動の発揮度 | S、A、B、C |
| 報酬 | 等級や評価に応じた処遇 | 基本給、昇給、賞与 |
課長は役職であり、G4は等級です。
同じ課長でも、管轄する組織や責任の大きさによって等級が異なる場合があります。反対に、役職がなくても、高度な専門性によって複数部署や全社に影響を与える社員を上位等級に位置づけることもできます。
等級と役職を完全に一致させると、制度はわかりやすくなります。一方で、役職ポストが空かなければ等級を上げられない、専門職を適切に処遇できないといった問題が生じます。
自社にとって、等級と役職を一致させるのか、一定の幅を持たせるのかを最初に決めておく必要があります。
等級制度の代表的な3類型
等級制度の代表的な基本類型は、次の3つです。
- 職能資格制度・職能等級制度
- 職務等級制度
- 役割等級制度
この3つは、「何を基準に格付けするか」という違いで整理できます。
| 基本類型 | 格付けする対象 | 基準となる問い |
|---|---|---|
| 職能等級 | 人が保有する能力 | この人には何ができるか |
| 職務等級 | ポスト・職務の価値 | この仕事はどのくらい重いか |
| 役割等級 | 任せる役割・責任 | この人にどこまで任せるか |
基本的な考え方は、この3類型でおおむね整理できます。
ただし、実際の企業が3つのうち一つだけを採用しているとは限りません。複数の基準を組み合わせたハイブリッド型や、階層・職種ごとに異なる等級制度を適用するケースもあります。
職能等級制度
職能等級制度は、「その人がどの程度の職務遂行能力を持っているか」を基準にする制度です。
特定のポストではなく、人に等級が付く点が特徴です。配置転換を行いながら長期的に人材を育成する会社や、幅広い業務を経験させたい会社に向いています。
一方で、保有能力を客観的に判断しにくく、年齢や勤続年数に応じた昇格になりやすい点には注意が必要です。
「長く働いているから能力も高いはず」という運用になると、実際に任せている仕事や会社への貢献と、等級・給与がずれていきます。
職務等級制度
職務等級制度は、担当する職務の難易度、責任範囲、事業への影響などを評価し、職務そのものを等級に格付けする制度です。
人ではなく、ポストや仕事に等級が付きます。
一般的には職務記述書、いわゆるジョブディスクリプションを作成し、次の内容を明確にします。
- 職務の目的
- 主な業務と責任
- 意思決定できる範囲
- 期待する成果
- 必要な知識、経験、スキル
- 上司や関係部署との関係
- 管理する人員や予算
そのうえで職務評価を行い、職務の価値に応じたジョブグレードと給与レンジを設定します。
専門職の中途採用が多い会社、ポストごとの責任差が大きい会社、職務の市場価値を給与に反映したい会社には向いています。
一方、一人が複数の仕事を兼務する会社や、組織変更が多い会社では、職務記述書の作成・更新負担が大きくなります。
職務を細かく固定しすぎると、「職務記述書に書かれていない仕事は担当しない」という問題や、柔軟な配置転換が難しくなる可能性もあります。
役割等級制度
役割等級制度は、会社から任せられた役割、責任、成果への影響範囲を基準にする制度です。
職務等級ほど仕事内容を細かく固定せず、「担当業務を自律的に完結する」「チームの成果に責任を持つ」「部門戦略を策定する」といった役割の大きさで等級を分けます。
一人が複数の業務を兼務する30〜100名企業や、組織変更が多い会社でも比較的運用しやすい制度です。
一方で、「主体的に貢献する」「リーダーシップを発揮する」といった抽象的な定義になりやすい欠点があります。
役割等級を運用する場合は、少なくとも次の範囲を具体的に定義する必要があります。
- どこまで自分で判断できるか
- どの成果に責任を持つか
- どの範囲の問題を解決するか
- 誰を巻き込む必要があるか
- チームや会社へどの程度の影響を与えるか
3種類だけでは説明できないハイブリッド型
実際の企業では、職能・職務・役割の複数の基準を組み合わせることがあります。
例えば、次のような設計です。
- 等級は役割の大きさで決め、必要な知識・スキルを職能要件として定める
- 管理職には職務等級、一般社員には役割等級を適用する
- 高度専門職には職務等級、若手社員には職能等級を適用する
- 全社員共通の等級に加えて、営業・技術・管理などの職群を設ける
- 管理職コースと専門職コースで異なる役割定義を設ける
ジョブファミリー、職群、複線型キャリア、バンド型等級は、職能・職務・役割とは異なる分類軸です。
そのため、「第4の等級制度」として並べるよりも、3つの基本類型を実際の組織へ適用するための補助的な仕組みとして整理する方が正確です。
30〜100名企業では、一つの考え方ですべての社員を統一するより、役割等級を全社共通の土台にしながら、管理職や高度専門職について職務等級的な考え方を取り入れる方法が現実的です。
ジョブ型人事には職務等級制度が必要か
ジョブ型人事と職務等級制度は関係が深いものの、同じものではありません。
ジョブ型人事は、必要な職務やポストを先に定め、そこに必要な人材を採用・配置し、職務や役割の大きさに応じて評価・処遇する人材マネジメント全体を指します。
一方、職務等級制度は、仕事の価値を等級に反映するための個別制度です。
両者の違いを整理すると、次のようになります。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| ジョブ型人事 | 採用、配置、評価、報酬、育成、キャリアを仕事基準でつなぐ人材マネジメント |
| 職務等級制度 | 職務の難易度や責任を評価して等級を決める仕組み |
| 職務給 | 職務や役割の価値に応じて給与を決める仕組み |
| 職務記述書 | 職務の目的、責任、要件などを記載した文書 |
| 職務評価 | 職務の価値や重さを比較・判定する工程 |
ジョブ型人事にするなら、必ず全社員を職務等級制度にしなければならないわけではありません。
政府の「ジョブ型人事指針」に掲載された企業事例でも、全社員に一律の職務等級制度を適用しているわけではありません。
例えば中外製薬は、管理職以上には職務等級制度を導入する一方、非管理職については育成や柔軟な職務アサインを重視し、役割等級制度を維持しています。内閣官房「ジョブ型人事指針」
したがって、次のような組み合わせも考えられます。
| 対象 | 等級制度の例 | 理由 |
|---|---|---|
| 経営・管理職 | 職務等級 | ポストごとの責任や事業への影響を定義しやすい |
| 高度専門職 | 職務等級 | 専門職務の難易度や市場価値を反映しやすい |
| 一般社員 | 役割等級 | 兼務、異動、組織変更に対応しやすい |
| 若手社員 | 職能・役割の併用 | 能力開発と任せる役割の両方を示せる |
ただし、「職務価値に応じて等級と給与を決める」という意味で厳格なジョブ型を導入するなら、名称はどうであれ、職務評価とジョブグレードに相当する仕組みが必要です。
反対に、職務等級制度を導入しただけでジョブ型人事になるわけでもありません。
- 職務記述書が更新されていない
- 実際の仕事と職務記述書が一致していない
- 年齢や勤続年数で給与が決まっている
- 異動時に等級や給与を見直していない
- ポストに必要な人材要件が定義されていない
- 採用、育成、配置が従来のままである
このような状態では、制度の名称だけがジョブ型になってしまいます。
厚生労働省も、職務給を等級制度や賃金制度だけの問題ではなく、評価、採用、配置転換、育成などと一体的に検討する必要があるとしています。厚生労働省「職務給の導入に向けた手引き」
重要なのは、「ジョブ型という流行に乗るか」ではありません。
どの職種・階層について、職務をどこまで明確にすれば、自社の経営、人材育成、採用に役立つかを判断することです。
30〜100名企業は職務等級を導入すべきか
30〜100名企業では、全社員に厳密な職務等級制度を導入することが必ずしも最適ではありません。
この規模では、一人の社員が営業、採用、顧客対応、業務改善など複数の役割を兼務していることが多く、職務の境界も頻繁に変わるからです。
職務等級が向いているのは、次のような会社・職種です。
- 職務内容と責任範囲を比較的固定できる
- 専門職の中途採用が多い
- 市場の給与水準を処遇に反映したい
- 同じ職種の社員が複数いる
- 管理職ポストごとの責任差が大きい
- 海外拠点やグループ会社と等級を共通化したい
- 職務記述書を定期的に更新できる
一方、次のような会社では、役割等級またはハイブリッド型の方が現実的です。
- 一人が複数の業務を兼務している
- 組織変更や担当変更が多い
- 若手を異動させながら育成したい
- 職務を細かく固定すると仕事が回らない
- 職務記述書を継続的に管理する人事体制がない
- 社員ごとに役割の組み合わせが異なる
30〜100名企業では、全社員を一律に職務等級へ移行するのではなく、全社共通の役割等級を土台とし、管理職や高度専門職など、職務価値を明確にできるポストに職務等級の考え方を取り入れる方法から検討するとよいでしょう。
等級制度の作り方を7ステップで解説
ステップ1 導入目的と人事方針を決める
最初に決めるのは、等級数ではなく制度を作る目的です。
例えば、次のような課題が考えられます。
- 社長の感覚だけで昇給や昇格が決まっている
- 管理職ごとに部下への期待が違う
- 社員に今後のキャリアを説明できない
- 中途採用者の給与を決める基準がない
- 管理職にならないと給与が上がらない
- 評価結果と昇格判断がつながっていない
導入目的が違えば、適切な等級制度も変わります。
人材育成を重視するなら能力基準を厚くし、責任と処遇を一致させたいなら役割基準を強くします。専門人材の採用競争力を高めたいなら、職務価値や外部の給与水準も検討する必要があります。
ステップ2 現在の仕事と役割を洗い出す
次に、社内にどのような仕事と役割が存在するかを整理します。
社員の業務をすべて細かく列挙する必要はありません。最低限、次の項目を管理職へのヒアリングで確認します。
- 担当している業務領域
- 自分で判断できる範囲
- 上司の承認が必要な範囲
- 責任を負っている成果
- 関係部署や顧客への影響範囲
- 後輩指導やチーム管理の有無
- 問題が起きたときに求められる対応
- 必要な知識、経験、資格
重要なのは、現在の社員の優劣を調べることではありません。会社にどのような役割や職務が必要なのかを整理することです。
「あの人は優秀だからG4」と人から考え始めると、その人が退職した瞬間に通用しない制度になります。
先に役割や職務という箱を作り、その後に社員を当てはめます。
ステップ3 等級制度の類型と適用範囲を決める
職能、職務、役割のどれを主な基準にするかを決めます。
全社員を一つの制度に統一する必要はありません。次のように対象を分けて考えることもできます。
- 一般社員は役割等級
- 管理職は職務等級
- 専門職は職務等級
- 若手社員は職能要件を重視
- 全社員共通の役割等級に、職種別基準を追加
あわせて、管理職以外のキャリアコースが必要かを確認します。
管理職になることだけが上位等級への道になると、優秀な技術者や営業担当者を、本人の適性に関係なく管理職へ登用することになります。
専門職として会社に貢献する役割が実際に存在する場合は、一定の等級から次の2コースに分ける方法があります。
- マネジメントコース:人と組織の成果に責任を持つ
- 専門職コース:専門性によって複数部署や全社の成果に貢献する
ただし、該当する役割が存在しない段階で、複雑な専門職制度を作る必要はありません。
ステップ4 等級数と全体の骨格を決める
30〜100名企業では、最初から等級を細かく作りすぎないことが重要です。
検討開始時の目安としては、次のような構造が考えられます。
| 従業員規模 | 等級数の検討例 | 想定する構造 |
|---|---|---|
| 30名前後 | 3〜4等級 | メンバー、中核人材、リーダー、管理職 |
| 50名前後 | 4〜5等級 | メンバー、中堅、リーダー、課長相当、部門責任者 |
| 100名前後 | 5〜6等級 | 一般社員層、複数管理職層、専門職 |
これは一般的な正解ではなく、設計を始めるための仮説です。
適切な等級数は、従業員数だけでは決まりません。職種数、管理階層、事業所数、採用計画、専門職の有無によって変わります。
最終的には、次の3点で確認します。
- 隣り合う等級の違いを一文で説明できるか
- 各等級に実際の役割や職務が存在するか
- 上位等級へ進むための成長差を社員に説明できるか
違いを説明できない等級は、分ける必要がない可能性があります。
ステップ5 等級定義と等級基準書を作る
等級定義は、その等級に期待する役割を1〜2文で示したものです。
一方、等級基準書は、判断範囲、責任範囲、問題解決、組織への影響などを項目別に整理したものです。
さらに、昇格基準は「どのような状態になったら上位等級へ移すか」を決めるものです。
この3つは分けて考えます。
| 文書・基準 | 役割 |
|---|---|
| 等級定義 | その等級を端的に表す |
| 等級基準書 | 項目ごとの期待水準を示す |
| 昇格基準 | 上位等級へ移す条件を示す |
等級定義を書くときは、次の型を使えます。
「対象となる業務・組織」において、「どこまで自ら判断し」、「どの成果に責任を持ち」、「誰にどのような影響を与えるか」
「主体性がある」「会社に貢献する」といった抽象的な言葉だけでは、等級間の違いを判断できません。
ステップ6 社員の当てはめと昇格・降格基準を決める
等級定義が固まったら、現在の社員を仮の等級に当てはめます。
この段階では、年齢、勤続年数、現在の給与だけで決めないことが重要です。現在任せている役割と、実際に発揮している能力・行動を分けて確認します。
また、等級要件を満たしていることと、昇格させることは同じではありません。
昇格基準には、例えば次の要素があります。
- 上位等級の要件を継続的に満たしている
- 直近数回の評価が一定水準以上である
- 上位等級の役割を任せられる状態にある
- 上司推薦や昇格審査を通過している
- 必要な研修や課題を完了している
降格についても、対象条件、判定期間、改善機会、処遇への影響をあらかじめ定める必要があります。
管理職への任用と等級上の昇格をどう分けるかは、管理職登用基準の作り方でも詳しく解説しています。
ステップ7 評価・給与と接続して仮運用する
最後に、等級制度を評価制度と給与制度につなげます。
確認するのは次の3点です。
- 各等級で評価する項目が等級定義と一致しているか
- 昇格条件が上位等級の定義と一致しているか
- 等級ごとの給与レンジが責任の違いと整合しているか
正式導入前には、管理職に複数の社員を仮で当てはめてもらいます。同じ社員に対する判断が管理職間で大きく異なる場合は、定義が曖昧か、基準の理解がそろっていません。
すぐに給与へ反映するのではなく、まず仮運用で次の点を確認します。
- 特定の職種だけ不利になっていないか
- 同じ等級に明らかに異なる役割が混ざっていないか
- 上位等級に空箱が多すぎないか
- 現在の給与との間に大きな逆転がないか
- 管理職が社員に等級決定の理由を説明できるか
5段階の等級定義サンプル
以下は、30〜100名企業で使える役割等級を想定した定義例です。
| 等級 | 名称例 | 等級定義 |
|---|---|---|
| G1 | 基礎遂行 | 上司や先輩の指示、手順に従って定型業務を正確に遂行する。問題が起きた場合は、適切なタイミングで報告・相談する。 |
| G2 | 自律遂行 | 担当業務の目的を理解し、優先順位や進め方を自ら判断して完結させる。日常的な問題には自ら対応し、必要に応じて周囲へ助言する。 |
| G3 | 中核・改善 | 担当領域の非定型な問題を解決し、業務改善や後輩育成を主導する。関係者を巻き込み、チームの成果や業務品質の向上に貢献する。 |
| G4 | 組織成果 | チームや部門の目標達成に責任を持ち、人員配置、進捗、品質、育成を管理する。部門内外の課題を調整し、組織として解決する。 |
| G5 | 部門経営 | 経営方針を部門戦略と計画に落とし込み、予算、人員、重要課題を統括する。部門を越えた意思決定に関与し、全社成果に責任を持つ。 |
30名規模であれば、G3とG4、またはG4とG5を統合する方法があります。
一方、100名規模で一般社員層の仕事の差が大きい場合は、G2とG3の間を分ける方法もあります。
重要なのは、人数に合わせて機械的に等級を増やすことではなく、隣り合う等級の違いを実際の仕事で確認できることです。
専門職コースの等級定義例
専門職コースを設ける場合、管理職と同じ等級水準に次のような定義を置くことができます。
| 等級 | 専門職の定義例 |
|---|---|
| G4 | 高度な専門性により、難易度の高い複数の案件を解決する。専門領域の標準化や後進育成を担い、複数部署の成果に影響を与える。 |
| G5 | 会社の競争力に直結する専門領域を確立し、全社の重要課題を解決する。専門方針、人材育成、技術・品質基準の策定を主導する。 |
専門職を「管理職になれなかった人」の受け皿にしてはいけません。
管理職と同等以上の処遇を行うのであれば、専門性が個人の成果だけでなく、複数部署や全社へどのような価値を生んでいるかを定義する必要があります。
等級基準書に入れる4つの項目
定義文だけでは社員の当てはめが難しいため、次の4項目で等級基準書を作ります。
| 基準 | 確認する内容 |
|---|---|
| 業務・役割の範囲 | 自分の担当、チーム、部門、全社のどこまで担うか |
| 判断・裁量 | 手順に従う、自ら判断する、他者の判断基準を作る、経営判断を行う |
| 責任・影響範囲 | 個人の業務、チーム成果、部門成果、全社成果のどこに責任を持つか |
| 問題解決・組織貢献 | 日常問題、非定型問題、部門横断課題、経営課題のどこまで解決するか |
後輩指導や部下育成をすべての上位等級に必須とすると、専門職が上がれなくなります。
「人を管理する責任」と「専門性によって組織へ影響を与える責任」は分けて設計する必要があります。
等級定義で避けたい3つの書き方
抽象的すぎる
「主体的に仕事へ取り組み、チームに貢献する」
これでは、新入社員にも管理職にも当てはまります。
次のように、対象範囲と判断水準を加えます。
担当業務の目的を理解し、優先順位や進め方を自ら判断して完結させる。日常的な問題については、上司の指示を待たずに対応する。
業務のチェックリストになっている
「見積書を作成できる。顧客対応ができる。会議に参加できる」
これは業務一覧であり、等級の違いを表していません。
業務内容ではなく、同じ仕事をどの水準で担うかを書きます。
顧客の要望を整理し、社内関係者と調整したうえで、自ら提案内容と対応方針を組み立てられる。
具体的な業務例は、等級定義にすべて書き込まず、職種別の補足資料に分ける方が更新しやすくなります。
現在の社員をモデルにしている
「あの人のように顧客対応ができる」「○○部長と同等の判断ができる」という定義は、社内では伝わりやすく見えます。
しかし、本人が異動・退職した場合に基準が失われます。特定の社員の行動を参考にする場合も、判断範囲や責任範囲へ抽象化して定義する必要があります。
30・50・100名規模別の合意形成
| 規模 | 原案作成 | 擦り合わせ | 仮運用 |
|---|---|---|---|
| 30名前後 | 経営者または管理部門 | 管理職・ベテラン1〜2名 | 全社員を仮当てはめ |
| 50名前後 | 経営者と人事担当 | 管理職会議で部下をシミュレーション | 評価期間中に検証 |
| 100名前後 | 経営、人事、部門責任者 | 部門別に確認後、全体会議で統合 | 職種間の不整合も確認 |
30名規模では、経営者が原案を作ること自体は問題ではありません。
ただし、特定の社員を思い浮かべながら定義を書くと、現在の人員に合わせた制度になります。原案完成前に、管理職やベテラン社員へ定義を見せ、複数の社員を同じ基準で判断できるか確認します。
50名規模では、「原案作成→管理職との擦り合わせ→仮当てはめ→修正」という流れが機能しやすくなります。
100名規模では、全職種共通の定義だけでは抽象度が高くなることがあります。全社共通の等級定義を土台にしつつ、営業、技術、管理などの職種別基準を補足する方法が現実的です。
等級制度の導入後によくある失敗
| 失敗 | 原因 | 改善策 |
|---|---|---|
| 定義を読んでも違いがわからない | 抽象語が多い | 判断範囲と責任範囲で書き分ける |
| 等級が多すぎる | 将来の組織を先回りした | 現在から1〜2年以内に必要な等級に絞る |
| 特定社員に合わせた制度になる | 人から等級を作った | 役割・職務を定義してから社員を当てはめる |
| 管理職にならないと昇格できない | 専門職キャリアがない | 管理職と専門職のコースを検討する |
| 等級定義と昇格基準が合わない | 別々に設計した | 上位等級の要件を昇格審査に反映する |
| 評価や給与に使われない | 周辺制度とつながっていない | 評価項目、給与レンジ、育成計画と接続する |
| ジョブ型が形だけになる | 職務記述書を作って終わった | 採用、配置、評価、報酬まで連動させる |
| 社員に受け入れられない | 決定過程と影響を説明していない | 管理職研修、社員説明、個別通知を行う |
等級制度を作ったことを一枚の資料で通知するだけでは、現場には定着しません。
管理職が部下に対して、「なぜ現在の等級なのか」「次の等級に上がるには何が必要か」を自分の言葉で説明できる状態を作る必要があります。
等級制度が必要になるタイミング
等級制度を検討すべきなのは、単純に社員数が一定数を超えたときではありません。
次のような兆候が出たときが検討のタイミングです。
- 社長が全社員の仕事内容を把握できなくなった
- 管理職ごとに昇給・昇格の考え方が違う
- 「なぜあの人が課長なのか」という不満が出ている
- 中途採用者の給与を個別交渉で決めている
- 管理職以外のキャリアを示せない
- 評価はしているが、育成や配置につながっていない
- 次の管理職候補が育っていない
- 同じ役職でも責任の大きさが異なっている
この時期は、権限委譲や管理職の役割が問題になりやすい50人の壁や、部門間連携と管理階層が複雑になる100人の壁とも重なります。
役割や権限が整理されていない状態で等級制度だけを入れても、誰が何に責任を持つかが曖昧なため、制度は形骸化しやすくなります。
等級制度を変更するときの注意点
既存の給与制度や役職制度を変更する場合は、新しい等級へ当てはめた結果、給与や手当が下がる社員がいないか確認が必要です。
厚生労働省の職務給導入に関する資料でも、次の工程が一連のものとして示されています。
- 導入目的を整理する
- 職務を見える化する
- 職務の重さを評価する
- 等級を設定する
- 給与制度を見直す
- 社員へ説明する
- 就業規則や賃金規程を見直す
等級制度を人件費削減の手段として扱ったり、十分な説明なく労働条件を不利益に変更したりすることは避けなければなりません。
就業規則や賃金規程の変更を伴う場合は、社会保険労務士や弁護士に確認しながら進めることをおすすめします。
等級制度の作り方に関するよくある質問
等級制度は何段階にすればよいですか
30〜100名企業では、3〜6等級程度から検討を始める方法があります。
ただし、人数だけで決めるのではなく、隣り合う等級の違いを説明できるか、実際にその水準の役割が存在するかで判断します。
等級と役職は同じにするべきですか
必ずしも同じにする必要はありません。
制度を簡潔にしたい場合は対応させても構いませんが、専門職を処遇したい場合や、同じ役職でも責任の大きさが異なる場合は、等級と役職を分けた方が運用しやすくなります。
ジョブ型人事なら職務等級が必要ですか
全社員への一律導入は必須ではありません。
ただし、職務の価値に応じて等級と給与を決める厳格なジョブ型を導入する場合は、職務評価とジョブグレードに相当する仕組みが必要です。
管理職は職務等級、一般社員は役割等級にするなど、対象に応じたハイブリッド設計も可能です。
等級制度だけ先に導入できますか
等級の骨格を先に作ることはできます。
ただし、正式導入する際は、評価、昇格、給与、育成とのつながりを確認する必要があります。等級だけを通知しても、実際の人事判断に使われなければ形骸化します。
等級制度はどのくらいの頻度で見直しますか
毎年全面改定する必要はありませんが、少なくとも年1回は、実際の役割と定義がずれていないか確認します。
事業再編、組織変更、新職種の採用、管理階層の追加があった場合は、その都度見直しが必要です。
まとめ
等級制度の作り方で重要なのは、等級数を決めることだけでも、きれいな定義文を作ることだけでもありません。
- 制度を作る目的を決める
- 現在必要な仕事と役割を整理する
- 職能・職務・役割のどれを基準にするか決める
- 必要に応じてハイブリッド型を検討する
- 隣り合う等級の違いを明確にする
- 社員を仮に当てはめて検証する
- 昇格・降格、評価、給与とつなげる
- 管理職が社員へ説明できる状態を作る
ジョブ型人事の導入を検討している場合も、最初から全社員を職務等級にする必要はありません。
自社のどの職種・階層で職務を明確にする必要があるのか、どこには育成や異動の柔軟性を残すのかを分けて考えることが重要です。
自社に適した等級数がわからない、職能・職務・役割等級のどれを選ぶべきか判断できない、既存社員の当てはめや給与との整合性に不安がある場合は、無料相談フォームからご相談ください。
30〜100名規模の組織を前提に、制度を複雑にしすぎず、現場で運用できる形へ整理します。
規模別や仕事のタイプ別に具体的な等級制度設計の事例を示してほしい
その通りです。現在の記事は「規模別の等級数」までは示していますが、読者が「自社ならどう組むか」を判断できるほど具体的ではありません。
以下のセクションを「5段階の等級定義サンプル」の後に追加すると、規模・職種・ジョブ型の選択が具体的につながります。
規模別・仕事のタイプ別に見る等級制度設計の具体例
適切な等級制度は、従業員数だけでは決まりません。
同じ50名企業でも、一人が複数の仕事を兼務する会社と、エンジニアや営業などの専門分化が進んだ会社では、適切な制度が異なります。
等級制度を設計するときは、少なくとも次の2軸で考える必要があります。
- 組織規模と管理階層
- 仕事の固定性、専門性、兼務の多さ
以下では、30名、50名、100名規模を想定した設計例を紹介します。
ここで示すのは、特定企業の実例ではなく、30〜100名企業に当てはめるための設計モデルです。実際には、事業内容、職種構成、現在の給与、人材育成方針に合わせた調整が必要です。
まず確認したい、仕事のタイプと等級制度の相性
| 仕事・組織の特徴 | 適した基本設計 | 理由 |
|---|---|---|
| 配置転換しながら育成する | 職能・役割の併用 | 担当業務が変わっても能力と成長段階を示せる |
| 一人が複数業務を兼務する | 役割等級 | 職務を細かく固定せず、責任範囲で区分できる |
| 職務内容が明確で固定的 | 職務等級 | 職務の難易度や責任を比較しやすい |
| 高度専門職を中途採用する | 職務等級+専門職コース | 職務の市場価値を等級・給与に反映しやすい |
| プロジェクトごとに役割が変わる | 役割等級+職種別基準 | プロジェクト内の責任と専門性を両方示せる |
| 現場技能を段階的に習得する | 職能等級+スキルマップ | 習得工程や異常対応力を具体的に確認できる |
| 管理職ポストの責任差が大きい | 管理職のみ職務等級 | 組織規模、予算、権限の違いを処遇に反映できる |
「ジョブ型を導入するから全社員を職務等級にする」と考えるのではなく、仕事の性質に応じて適用範囲を決めます。
事例1 30名のサービス企業|全社共通の4段階役割等級
想定する会社
- 従業員数30名
- 営業、顧客対応、企画、管理業務を兼務する社員が多い
- 管理職は社長と部門責任者2名
- 専任人事はいない
- 社員ごとの仕事の境界が明確ではない
- 社長の感覚で昇給・昇格を決めている
この会社では、職務を細かく定義して職務等級にすると、担当変更のたびに職務記述書と等級を見直す必要があります。
そのため、全社員共通の役割等級を4段階で設計します。
等級構成
| 等級 | 名称例 | 役割定義 | 想定する社員 |
|---|---|---|---|
| G1 | 基礎遂行 | 指示や手順に基づいて定型業務を遂行し、問題があれば報告・相談する | 新入社員、未経験者 |
| G2 | 自律遂行 | 担当業務を自ら計画し、日常的な問題を解決しながら完結させる | 一般社員 |
| G3 | 中核・改善 | 複数業務を担い、後輩支援、業務改善、関係者調整を主導する | ベテラン、リーダー候補 |
| G4 | 組織成果 | チーム目標、人員配置、業務品質、育成に責任を持つ | 部門責任者、管理職 |
等級と役職の関係
| 等級 | 対応する役職 |
|---|---|
| G1 | 役職なし |
| G2 | 役職なし |
| G3 | 役職なし、主任、リーダー |
| G4 | マネージャー、部門責任者 |
G3に上がるために、必ず役職へ就ける必要はありません。
優秀な実務担当者を処遇するため、G3までは役職と切り離します。G4はチーム成果と部下育成に責任を持つため、原則として管理職ポストと連動させます。
昇格基準の例
G2からG3への昇格では、単に自分の仕事ができるだけでは不十分です。
- 複数の業務を安定して担当できる
- 非定型な問題を自ら整理して解決できる
- 後輩や新人へ実務上の助言ができる
- 業務改善を提案し、実行まで進めた
- 関係者を巻き込んで仕事を進められる
- 複数回の評価で上位等級相当の行動が確認されている
G3からG4へ上がる場合は、本人の能力だけでなく、実際にチームや部門の責任を任せることが前提になります。
この設計が向いている理由
30名規模では、職務を分けすぎるよりも、「どこまで自分で判断するか」「個人とチームのどちらに責任を持つか」で等級を分ける方が運用しやすくなります。
一方で、将来50名以上へ拡大し、専門職が増えた場合は、G3以上に専門職コースを追加する余地を残します。
事例2 50名のIT・SaaS企業|共通等級+職種別基準+複線型キャリア
想定する会社
- 従業員数50名
- 営業・カスタマーサクセス15名
- エンジニア・デザイナー20名
- コーポレート部門10名
- 経営・その他5名
- エンジニアの採用競争が激しい
- 管理職にならない専門職の処遇が必要
- プロジェクトや担当領域の変更が多い
この会社では、全社員を同じ基準だけで評価すると、営業とエンジニアの仕事の違いを表せません。
一方、職種ごとに別の等級制度を作ると、制度が複雑になり、職種間の等級水準も比較できなくなります。
そこで、全社共通の5段階等級を設けたうえで、職種別基準を追加します。
全社共通の等級構成
| 等級 | 共通する役割水準 |
|---|---|
| G1 | 指示・支援を受けながら担当業務を遂行する |
| G2 | 担当領域を自律的に完結させる |
| G3 | 難易度の高い問題を解決し、改善や後輩支援を主導する |
| G4 | チーム成果または高度な専門領域に責任を持つ |
| G5 | 部門成果または全社的な専門領域に責任を持つ |
G1からG3までは全社員共通です。
G4以降は、マネジメントコースと専門職コースに分けます。
G4・G5の複線型キャリア
| 等級 | マネジメントコース | 専門職コース |
|---|---|---|
| G4 | チーム目標、人員配置、育成、業務品質に責任を持つ | 高度な専門性で複数の重要案件を解決し、職種内の標準を作る |
| G5 | 部門戦略、予算、人員、部門成果に責任を持つ | 全社の競争力に関わる専門方針を定め、複数部門へ影響を与える |
職種別のG3定義例
全社共通のG3は「難易度の高い問題を解決し、改善や後輩支援を主導する」です。
これを職種別に具体化します。
| 職種 | G3の定義例 |
|---|---|
| 営業 | 担当顧客の複雑な課題を整理し、社内関係者と連携して提案を設計する。商談の型を共有し、後輩の案件支援を行う |
| カスタマーサクセス | 複数顧客の利用課題を分析し、継続率や活用度を改善する施策を実行する。重要顧客の対応方針を設計する |
| エンジニア | 担当機能の設計からリリースまでを主導し、品質・性能・保守性に関する問題を解決する。コードレビューや技術支援を行う |
| デザイナー | 複数画面・機能にまたがる体験を設計し、ユーザー課題と事業要件を調整する。デザイン品質の基準作りに関与する |
| コーポレート | 非定型な労務・経理・法務課題を整理し、関係者と調整して解決する。業務ルールや社内プロセスを改善する |
ジョブ型の要素をどこに入れるか
この会社では、全社員に厳密な職務等級を導入しません。
代わりに、次のポストだけ職務記述書を作ります。
- 部門長
- エンジニアリングマネージャー
- プロダクトマネージャー
- 高度専門職
- 採用市場で個別の給与設定が必要な専門職
職務記述書には、職務目的、成果責任、意思決定範囲、必要な経験・スキルを記載します。
一般社員は役割等級で柔軟性を残し、重要ポストには職務等級的な管理を取り入れるハイブリッド型です。
この設計が向いている理由
IT・SaaS企業は仕事の専門性が高い一方、組織変更やプロジェクト変更も多いため、全社員の職務を固定すると運用負担が大きくなります。
全社共通の役割水準を設け、職種ごとに具体化し、上位の重要ポストだけ職務を定義することで、柔軟性と専門職処遇を両立できます。
事例3 100名の製造業|6段階等級+職群別基準+管理職の職務等級
想定する会社
- 従業員数100名
- 製造職50名
- 技術・品質職20名
- 営業職15名
- 管理部門10名
- 経営・その他5名
- 拠点や製造ラインが複数ある
- 現場技能、管理能力、専門性の違いを処遇へ反映したい
- 同じ課長でも管轄人数や責任範囲が異なる
この会社では、全職種を同じ文章だけで定義すると抽象的になります。
一方、職種ごとに完全に別の等級制度を作ると、制度全体が複雑になります。
そこで、6段階の全社共通等級を設け、製造、技術・品質、営業、管理の4つの職群別基準を追加します。
全社共通の等級構成
| 等級 | 全社共通の役割水準 |
|---|---|
| G1 | 指示・手順に基づいて基礎業務を遂行する |
| G2 | 担当業務を自律的かつ安定的に遂行する |
| G3 | 熟練者として異常・非定型問題に対応し、後輩を指導する |
| G4 | チーム・工程・専門領域の成果と改善に責任を持つ |
| G5 | 部門成果、人員、予算、部門横断課題に責任を持つ |
| G6 | 事業・全社戦略を担い、複数部門の成果に責任を持つ |
職群別のG3・G4定義例
| 職群 | G3 | G4 |
|---|---|---|
| 製造 | 複数工程を担当し、品質異常や設備トラブルの初期対応を行う。後輩へ作業指導ができる | 工程全体の安全、品質、納期、生産性に責任を持ち、改善活動を主導する |
| 技術・品質 | 担当技術の難易度が高い問題を分析し、原因究明と対策を行う | 複数製品・工程の技術基準や品質基準を策定し、部門横断の問題を解決する |
| 営業 | 重要顧客の課題を把握し、技術・製造部門と連携して提案を設計する | 営業チームまたは市場領域の売上、収益、顧客戦略に責任を持つ |
| 管理部門 | 非定型な実務課題を解決し、規程・業務プロセスの改善を行う | 全社制度や管理方針を設計し、複数部門を巻き込んで導入・運用する |
製造職はスキルマップを併用する
製造職では、等級定義だけで技能差を判断するのが難しいため、別途スキルマップを作ります。
| 項目 | G1 | G2 | G3 | G4 |
|---|---|---|---|---|
| 対応工程 | 1工程を支援付きで担当 | 1工程を単独担当 | 複数工程を担当 | 工程全体を管理 |
| 品質対応 | 異常を報告 | 基本的な原因確認 | 原因分析と応急対応 | 再発防止を設計 |
| 安全 | ルールを理解する | ルールを遵守する | 周囲へ指導する | 安全基準を改善する |
| 改善 | 提案に参加する | 小規模改善を実施する | 改善活動を主導する | 工程全体の改善を統括する |
| 育成 | 指導を受ける | 新人を支援する | 作業指導を行う | 教育計画を作る |
保有資格や対応できる工程数だけで等級を決めないことが重要です。
上位等級では、異常対応、改善、指導、工程成果への責任まで確認します。
管理職には職務等級を適用する
100名規模になると、同じ「課長」でも責任の大きさが異なることがあります。
例えば、5名の管理部門を管轄する課長と、30名の製造部門を管轄し、品質・納期・原価まで担う課長では、職務の重さが同じとは限りません。
管理職ポストは、次の項目で職務評価します。
- 管轄人数
- 予算・売上・原価への責任
- 意思決定できる範囲
- 担当領域の複雑性
- 顧客・取引先への影響
- 品質・安全・法令上の責任
- 部門横断で与える影響
- 後継者育成の責任
その結果に応じて、同じ課長でもG4またはG5に位置づけます。
役職名ではなく、実際の職務と責任によって等級を決める設計です。
この設計が向いている理由
100名規模では、全社共通の考え方を維持しながら、職種ごとの仕事の違いも表現する必要があります。
全社共通等級、職群別基準、製造職のスキルマップ、管理職の職務評価を組み合わせることで、制度の統一性と職種ごとの具体性を両立できます。
仕事のタイプ別・等級基準の作り方
営業職
営業職の等級を、売上金額だけで決めると、担当市場や顧客条件によって不公平が生じます。
売上や受注は評価・賞与で確認し、等級は次のような役割の違いで分けます。
- 担当顧客の難易度
- 商談の複雑性
- 自ら提案を設計できる範囲
- 社内関係者を巻き込む範囲
- 重要顧客への責任
- 営業手法を再現・共有する力
- 後輩やチームへの支援
- 市場や営業戦略への関与
| 等級 | 営業職の定義例 |
|---|---|
| G1 | 指示を受けながら顧客対応や営業活動を行う |
| G2 | 担当顧客への提案から受注までを自律的に進める |
| G3 | 複雑な顧客課題を整理し、関係部署と連携して提案を設計する |
| G4 | チームまたは市場領域の売上・収益・顧客戦略に責任を持つ |
| G5 | 全社営業戦略、重要市場、営業組織の成果に責任を持つ |
エンジニア・技術職
エンジニアや技術職は、経験年数や資格だけで等級を決めないようにします。
確認するのは、技術を保有しているかだけでなく、どの範囲の問題を解決し、組織へどの程度の影響を与えているかです。
- 技術的な難易度
- 設計・判断できる範囲
- 品質、安全、セキュリティへの責任
- 担当システム・製品の範囲
- 技術的な問題解決
- 標準化や再利用への貢献
- レビューや育成
- 技術戦略への関与
| 等級 | エンジニア・技術職の定義例 |
|---|---|
| G1 | 指導を受けながら限定された技術業務を遂行する |
| G2 | 担当機能・製品・工程を自律的に完結させる |
| G3 | 難易度の高い問題を解決し、設計・レビュー・改善を主導する |
| G4 | 複数案件または重要領域の技術品質に責任を持つ |
| G5 | 全社技術戦略や技術基盤を策定し、競争力に影響を与える |
製造・オペレーション職
製造・オペレーション職では、習得技能と役割責任を組み合わせます。
- 対応できる工程数
- 単独で遂行できる範囲
- 品質・安全基準の理解
- 異常発生時の対応力
- 生産性や品質の改善
- 後輩への作業指導
- 工程全体への責任
「できる作業が増えた」だけでなく、異常対応、改善、指導へ責任範囲が広がっているかを確認します。
管理部門・バックオフィス
管理部門は売上のような直接的な数値が少ないため、業務量や勤続年数で等級を決めてしまいがちです。
次の基準で役割の違いを判断します。
- 定型業務と非定型業務の割合
- 判断が必要な案件の難易度
- 経営・法令・従業員への影響
- 制度や規程を設計する範囲
- 複数部署との調整
- 業務プロセス改善
- リスクの発見と予防
- 経営意思決定への支援
| 等級 | 管理部門の定義例 |
|---|---|
| G1 | 手順に従って定型業務を正確に処理する |
| G2 | 担当領域の日常業務を自律的に完結させる |
| G3 | 非定型課題を解決し、業務ルールやプロセスを改善する |
| G4 | 全社制度を設計し、複数部署を巻き込んで導入する |
| G5 | 経営課題を管理制度へ落とし込み、全社的なリスクと組織基盤に責任を持つ |
管理職
管理職の等級は、部下人数だけで決めません。
- 組織目標への責任
- 予算・売上・原価への責任
- 人員配置と育成
- 意思決定権限
- 担当領域の複雑性
- 他部門への影響
- 経営戦略との接続
- 後継者育成
同じ役職名でも責任が大きく異なる場合は、役職と等級を一対一に対応させず、職務評価によって複数の等級を設定します。
職能・職務・役割等級では昇格の考え方も異なる
制度類型によって、「等級が上がる条件」も変わります。
| 制度 | 等級が上がる主な条件 |
|---|---|
| 職能等級 | 上位等級に必要な能力を継続的に保有・発揮している |
| 職務等級 | 上位等級に位置づけられた職務・ポストへ任用される |
| 役割等級 | より大きな役割を任され、その責任を果たせる状態にある |
| ハイブリッド型 | 能力・役割要件を満たし、必要に応じて上位ポストへ任用される |
職務等級では、高い成果を出しただけで職務等級が上がるとは限りません。同じ職務を担当し続ける場合、成果は昇給や賞与に反映し、等級は変わらない設計もあります。
一方、職能等級では、担当ポストが変わらなくても能力向上によって等級が上がることがあります。
この違いを曖昧にすると、「評価が高いのになぜ昇格しないのか」という不満につながります。
自社の設計を決めるための判断表
| 確認する質問 | 当てはまる場合の方向性 |
|---|---|
| 担当変更や兼務が多いか | 役割等級を中心にする |
| 配置転換しながら人材を育てるか | 職能要件を取り入れる |
| 職務内容を明確に固定できるか | 職務等級を検討する |
| 専門職の市場価値を給与に反映したいか | 専門職に職務等級を適用する |
| 同じ役職でも責任差が大きいか | 管理職ポストを職務評価する |
| 管理職以外のキャリアが必要か | 専門職コースを設ける |
| 職種ごとに仕事が大きく異なるか | 全社共通等級+職種別基準にする |
| 制度を管理する人事体制が弱いか | 等級数と職種別基準を絞る |
最終的には、制度の精密さではなく、「管理職が判断でき、社員へ説明でき、継続して更新できるか」で設計を決めます。
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