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「評価制度を入れたら、優秀な社員が辞めた」という話があっても、制度だけを離職の原因と決めつけることはできません。仕事内容、上司との関係、報酬、働き方など複数の要因が重なります。一方、評価の基準が不明確で、理由を説明できず、本人が意見を伝える機会もない状態は、制度への不信を招く要因になり得ます。

この記事では、評価制度の導入前後に確認できる仕組み上のリスクを整理します。個々の離職理由を推測せず、本人の声や運用記録を確かめることが出発点です。

中小企業庁の2026年版白書の調査では、2019年以降に採用した従業員の定着割合が「7割以上」と回答した事業者は、人事評価制度ありで49.6%、なしで48.8%でした。「3割未満」と回答した事業者は、それぞれ11.3%と17.1%です(第2-3-7図、制度あり5,763事業者・なし5,546事業者)。調査上の差は評価制度が定着を生む因果を示すものではありません。制度の効果を断定せず、評価の明確さ・公正さと定着の関係を検討する参考として扱います。(2026年版中小企業白書)

不信につながりやすい4つの状態

  1. 期待が後から変わる:期初には共有されていない基準で期末に評価する。
  2. 評価者で基準が違う:同じような仕事でも上司によって点数や説明が変わる。
  3. 結果の根拠が見えない:本人に具体的な事実や改善の方向が示されない。
  4. 処遇への影響を理解できない:評価が給与や昇格にどう反映されるか説明されていない。

これらが起きたから必ず離職するという意味ではありません。ただし、社員の納得を得るうえで改善すべき運用課題として確認できます。

導入前にそろえること

評価対象と役割を明らかにする

職種・等級ごとに期待する成果や行動を確認します。評価項目の数を増やすより、項目ごとに判断できる具体例を用意してください。

目標・評価・処遇の関係を説明する

目標達成だけで評価が決まるのか、役割上の行動や専門性も扱うのかを定めます。評価結果が給与・賞与へ与える影響も、社員へ事前に説明します。

評価者が根拠を記録する

期末の記憶だけに頼らず、仕事の事実、本人の工夫、困難だった条件を記録します。評価者間の会議は点数をそろえるためではなく、基準の解釈と根拠を確認するために行います。

面談で本人の見方も聞く

評価結果の通知だけで終わらせず、本人の認識との違い、追加で説明すべき点、次期の支援を確認します。評価に対する意見や相談を受ける窓口も決めます。

すでに不満や離職が出ているとき

離職者の発言、退職面談、異動希望、評価に関する問い合わせを、個人が特定されない形でテーマ別に整理します。評価以外の理由も同時に確認し、制度を変えた場合と変えない場合の影響を比較します。評価制度の設計順は人事評価制度の作り方、管理職の役割設計は管理職登用基準を参照してください。

導入前の「もし失敗したら」確認

導入プロジェクトの関係者で、次の質問に答えられるかを確かめます。

  • 社員が「自分に何を期待しているか分からない」と言ったら、どの資料を直すか。
  • 管理職が評価理由を説明できない場合、誰が支援するか。
  • 達成が難しい目標を本人が期中に相談したとき、どの条件で変更するか。
  • 部門ごとに評価の傾向が異なった場合、仕事の違いと運用差をどう見分けるか。
  • 評価結果への疑問や事実誤認を誰が受け付けるか。

回答が決まっていない項目は、導入スケジュールへ追加します。正式な制度を急いで公開するより、質問と例外の扱いを先に決める方が、導入後の手戻りを抑えられます。

離職が発生したときの調査手順

退職者本人が説明した理由、管理職の記録、制度変更の時期、他の業務・職場要因を区別して確認します。本人が退職理由を一つしか話さなかった場合も、それが唯一の原因だと決めません。複数の社員に同じ困りごとが出ているか、制度変更前後で質問や相談が変わったかを見て、改修の仮説を立てます。

まとめ

評価制度が離職を起こすと一律に言うことはできません。見直すべきなのは、期待基準、評価根拠、処遇への接続、説明と相談の機会が社員から見える形で運用されているかです。導入前に小さく試し、社員と評価者が迷った箇所を制度へ反映します。

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