一人目人事が採用できない理由と、採用できても続かない理由

Staffing | 人材

「そろそろ人事担当を一人採用しよう」。従業員が30〜50名に近づいた会社の経営者から、この相談を受けることがよくあります。そして次に続くのはたいてい同じ言葉です。「求人を出しても応募が来ない」「面接まで進んでも、この人でいいのか判断できない」「採用できたはずなのに、半年で辞めてしまった」。

組織人事のコンサルタントとして、この規模の会社の採用と組織設計に関わってきました。一人目人事の採用がうまくいかない会社には、共通した構造があります。個々の担当者の能力の問題ではなく、会社の側の準備不足であることがほとんどです。

この記事でわかること。

  • 30〜50名規模で一人目人事の採用が難航する構造的な理由
  • 採用できても定着しない、という見落とされがちな盲点
  • 正社員採用や業務委託でもない、第三の選択肢としての「外部人事委託」という考え方

「採用できない」を根性論やスキル論ではなく、構造の問題として整理していきます。

なぜ30〜50名規模で一人目人事の採用がうまくいかないのか

求人票が「なんでも屋」になり、応募が来ない

一人目人事の求人票を見せてもらうと、採用・労務・評価制度・研修・広報・総務までひとつの求人に詰め込まれていることが多くあります。経営者としては「困っていることを全部書いた」つもりなのですが、応募する側から見ると「何のプロを募集しているのか分からない」求人になってしまいます。

人事という職種は、採用に強い人、労務に強い人、制度設計に強い人でタイプが分かれます。専任人事がいない会社ほど、そのすべてを一人に求めがちです。結果として、求人の的が絞れず、応募が集まりません。

さらに厄介なのは、応募が少ないことへの対処として、求人票をさらに手広くしてしまう会社があることです。「もっといろいろできる人でないと」と条件を足すほど、求める人物像はますますぼやけていき、応募はさらに減っていきます。まず絞るべきは業務範囲であって、求人媒体や写真、キャッチコピーではありません。

経営者が「自分の分身」を求めてしまう

もうひとつのパターンは、経営者が無意識に「自分と同じ熱量で、自分の代わりに人事を回してくれる人」を求めてしまうことです。面接で「なんとなく違う」という感覚だけで見送りが続き、採用基準が曖昧なまま長期化します。

いわゆる「青い鳥症候群」に近い状態で、完璧な万能人事を待ち続けるうちに、採用自体が止まってしまいます。人事の経験がない経営者が一人で人事を評価しようとすること自体に、そもそも無理があります。

この場合、面接に同席する人を増やしても解決しません。同じように人事の評価経験がない役員や現場マネージャーが同席したところで、「なんとなく良さそう」という同じ曖昧な基準がもう一人分増えるだけだからです。必要なのは人数ではなく、外部の物差しです。

判断できる人が社内にいない

採用要件を決めるにも、面接で候補者を評価するにも、本来は人事の専門知識が必要になります。ところが一人目人事を採用しようとしている会社には、人事の専門知識を持つ人がまだ社内にいません。人事を採用するための目利きが、社内にいないまま採用を進めることになります。

これは会社の落ち度ではなく、順番の問題です。人事機能がまだない会社が、人事を評価する目も持っていないのは当然のことで、ここで無理に一人で判断しようとするから、採用が長引いたり、ミスマッチが起きたりします。

この構造に気づかないまま採用エージェントに丸投げしても、エージェント側は「経営者が欲しいと言った人物像」に沿って候補者を集めるだけなので、根本的な目利き不足は解消されません。採用チャネルを変える前に、まず社内側の評価基準を誰がどう作るのかを決める必要があります。

「採用できても定着しない」という盲点

一人目人事の話をするとき、多くの記事は「どう採用するか」で終わります。しかし現場で何度も目にしてきたのは、採用できたあとに定着しないという問題です。ここに触れている情報はまだ少ないのが実情です。

一人目人事というポジションは、構造的に孤独になりやすいものです。

  • 社内に人事の相談相手がいない。自分の判断が正しいのか、誰にも確認できない。
  • 評価する人がいない。経営者は人事の専門性を評価できないため、本人も「見てもらえている」感覚を持てない。
  • 前任者もマニュアルもない。ゼロから制度を立ち上げながら、日々の労務対応もこなす必要があり、業務量そのものが重い。

半年〜1年で一人目人事が退職してしまう会社を何社も見てきました。退職理由は「思っていた仕事と違った」「相談できる人がいなくて孤独だった」という声が多く、能力不足で辞めていくケースはむしろ少数です。優秀な人ほど、任されている責任の重さと、それを支える体制のなさのギャップに疲れてしまいます。

採用できないことだけでなく、採用できても孤立して辞めてしまうことまで含めて、一人目人事の「採用できない問題」だと捉え直す必要があります。

一方、すでに一人目人事として働いている本人は、どのような場面で孤独や負担を感じ、会社に何を求めているのでしょうか。業務過多、優先順位、権限、経営者との関係など、一人目人事本人が抱えやすい悩みと解決策を、別の記事で詳しく整理しています。

関連記事:一人目人事がつらいと感じたら|ひとりで抱えやすい7つの悩みと解決策

「正社員」か「業務委託」かという二択の限界

一人目人事の採用に悩む会社が次に検討するのは、正社員採用を諦めて業務委託や採用代行に切り替える、という選択肢です。ここで一度、それぞれの限界を整理しておきます。

正社員採用は、社内に人事機能を根付かせられる一方で、採用そのものに時間がかかり、ここまで書いてきたミスマッチや孤立のリスクを抱えたまま採用を進めることになります。

業務委託や採用代行(RPO)は、採用の実務そのものは早く進められます。ただし多くの場合、代行してもらえるのは採用活動の一部分に限られ、評価制度や組織づくりまで含めた人事機能そのものを任せられるわけではありません。契約が終わればノウハウも社内に残らず、スポットの支援で終わることが多くなります。

正社員か業務委託か、という二択で考えている限り、どちらを選んでも「専任人事がいない会社の構造的な弱さ」自体は解消されません。

第三の選択肢:採用の代わりに、月単位で人事機能を伴走する

ここで検討してほしいのが、一人目人事を採用する代わりに、外部の人事責任者が月単位で会社に伴走する「外部人事委託」という形です。正社員のように採用の手間や孤立のリスクを負わず、業務委託のようにスポットで終わらせず、継続的に人事機能そのものを提供します。

三つの選択肢を並べると、それぞれの向き不向きが見えてきます。

比較軸正社員採用業務委託・採用代行外部人事委託(月単位の伴走)
立ち上がりの速さ遅い(採用に数ヶ月)早い早い(契約後すぐ稼働)
対応範囲広い(ただし本人の力量次第)採用実務など一部分が中心採用・評価・組織づくりまで横断
ノウハウの蓄積社内に残る残りにくい経営者・管理職に伴走しながら残す
相談相手・孤立リスク本人が孤立しやすい契約範囲外は相談しづらい経営者が壁打ち相手になれる
コスト採用コスト+固定給与スポットごとの費用月額固定(継続契約)

外部人事委託は、経営者の分身を演じるわけでも、業務を丸ごと代行するわけでもありません。今この会社に必要な人事機能は何かを一緒に整理しながら、評価制度や組織図、管理職の育成を順番に形にしていく役割です。人事を「代行してもらう」のではなく「一緒に設計していく」という感覚に近いものです。

伴走が始まった最初の1〜2ヶ月は、新しい制度を作ることよりも、まず現状を整理することに時間を使います。経営者や現場の管理職に個別にヒアリングし、今どこにボトルネックがあるのか、何から手をつけるべきかの優先順位を一緒に確認するところから始めます。いきなり評価制度や採用計画に着手しないのは、順番を間違えると後で手戻りが起きやすいからです。

一人目人事の採用に苦戦している会社の多くは、実はまだ「何を人事に任せるべきか」自体が固まっていません。その段階でいきなり採用活動を始めるより、先に機能を整理しながら伴走してもらう方が、遠回りに見えて実は近道になることが多いのです。

よくある質問(FAQ)

  • Q. 一人目人事の採用は、何名くらいの規模から考え始めればよいですか? → 目安は30名前後です。社長一人で全員の状況を把握できなくなり始めるタイミングで、採用・評価・労務のいずれかで手が回らなくなる兆候が出てきます。
  • Q. 求人票の「なんでも屋」感を減らすには、まず何を削ればよいですか? → 採用・労務・評価制度・研修のうち、今いちばん困っている1つを選び、それだけを前面に出すことです。他の業務は「将来的にお願いする可能性がある」程度の書き方に留めます。
  • Q. 一人目人事が定着しないのは、採用がうまくいっていない証拠ですか? → 必ずしもそうとは限りません。むしろ人選が的確だった優秀な人ほど、孤立した環境に疲れて辞めていく傾向があります。定着しない原因は採用の精度ではなく、受け入れ側の体制であることが多いです。
  • Q. 外部人事委託は、いずれ正社員の一人目人事に置き換わるものですか? → 会社によります。組織の規模が大きくなり、専任の人事機能を社内に持つ必要が出てきた段階で、正社員採用へ移行するケースもありますし、継続して外部から伴走してもらう形を選ぶ会社もあります。
  • Q. 外部人事委託を検討する場合、法律上の契約形態で注意すべき点はありますか? → 業務委託契約か準委任契約かなど、契約形態によって責任範囲や労働法上の扱いが変わる場合があります。個別の契約内容については、社会保険労務士や弁護士など専門家に確認することをおすすめします。

一人目人事の採用を考える前に、整理しておきたいこと

一人目人事の採用を検討している経営者に、まず考えてほしいことが三つあります。

一つ目は、求人票を書く前に、今の会社に本当に必要な人事機能は何かを言語化することです。採用なのか、評価制度なのか、労務対応なのか。全部を一人に求める限り、良い人には出会えません。

二つ目は、これは「30人の壁」や「50人の壁」とも地続きの問題だという認識を持つことです。30人・50人・100人という組織の壁は、社長一人で見られる範囲を超えた瞬間に訪れる構造的な転換点であり、一人目人事の必要性が生まれるのもまさにこのタイミングです。壁が来る前に人事機能をどう整えるかという発想が欠けたまま採用だけを急ぐと、今回書いたようなつまずきが起きやすくなります。

三つ目は、権限委譲の壁との関係です。管理職を置いたのに結局すべて社長が決めている、という50人の壁を抱えている会社ほど、専任人事が不在のまま権限委譲を進めようとして、判断基準が曖昧なまま現場が混乱しがちです。人事機能の不在は、採用の話だけでなく、組織全体の意思決定の壁ともつながっています。

まとめ:採用できないなら、採用以外の道も検討する

一人目人事の採用が難航するのは、多くの場合、能力の高い候補者に出会えていないからではありません。求人が「なんでも屋」になっている、経営者が完璧な分身を求めてしまっている、社内に人事を評価する目がまだない、という会社側の準備不足が背景にあります。そして採用できたとしても、孤独なポジションゆえに定着しないという問題が控えています。

正社員採用と業務委託という二択で悩み続ける前に、月単位で人事機能そのものに伴走してもらう「外部人事委託」という第三の選択肢も検討してみてください。採用がうまくいかないと感じている今こそ、何を人事に任せるべきかを一緒に整理するタイミングかもしれません。

一人目人事の採用や定着を考える際は、会社側の事情だけでなく、実際に一人で人事を担う本人が何に苦しむのかを理解しておくことも重要です。

関連記事:一人目人事がつらくなる7つの理由と、会社・本人ができる対処法

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